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考えなくちゃ[2]

変だ、俺。絶対ヘン。 前はカノジョと喧嘩しても別れても、悔しかったり悲しかったりはしたけど、こんなに泣くことなんてなかったのに。 諦めて、次に進もう!とか、やっぱり男友達と一緒に居たほうが楽だよね!とか…。 今だって恋愛云々よりも、男友達と一緒に居たほうが楽なのは変わってない筈なのに…… 悠さんが俺のこと女の子みたいに抱いたりするから、俺、女の子になっちゃったのかな…? こんなヤツ、気持ち悪くなっちゃって、それで別れようとしてる? リュートさんみたいに大人で綺麗で色っぽかったら捨てられない? ……どうしよう。 ちゃんと真剣に考えなくちゃいけないのに、何を考えてたんだかわからなくなってきた。 ちゃんと考えないと、また怒らせて、嫌われちゃう。 カチャ─── ドアの開く音がして、廊下から光の筋が差し込んだ。 悠さん…だ───! どうしよう…どうしよう…… まだ、考えは纏まってないのに…… ああ、でも、俺はばかだから、考えても考えても正しい答えに辿り着きっこない。 考えてるのに…どうして?なんで? 悠さんが隣に腰を下ろした。 俺が泣いてるのに気付いたのか、一瞬躊躇したみたいに固まって。 また泣いてる、って。鬱陶しい、面倒臭いって思われても仕方ない。 俺だって、もしこんな泣き虫な男が隣にいたら、もっとしっかりしろよ男なんだから!ってきっと思う。 悠さんが、なにか…言ってる? 聞きたくない。拒絶の言葉なら、聞きたくなんかない! 「ごめんなさいっ」 別れようって言われる前に、謝罪の言葉で斬り込んだ。 「俺っ、バカだからわかんなくて…っ」 悠さんは暫く黙りこんで、それから何故かこめかみにキスをくれた。 それはやさしさ?それとも別れのキス? 俺は何回も、ごめんなさいを繰り返した。 悠さんは俺を膝に乗せて、背中から抱きしめてくれた。 涙を袖口で拭う。 顔を上げてもその表情は、暗くて見ることは適わない。 考えるのを放棄したいんじゃない。 ほんとは自分で考えなくちゃいけないんだろう。 だけど、考えれば考えるほどこんがらがって、悠さんに捨てられることが怖くて、何も考えられなくなっていく。 「俺、どうしたらいいですか?」 助けを求めて、そう訊ねた。 「どうする…?か……」 「っ…ごめんなさい!」 「あー、ほらほら。もう謝らないでいいから」 背中をよしよしと擦られる。 もう謝らなくていい、という事は、謝られたところでもう腹づもりは決まっている、と言うことなのだろうか。 俺は、最後の審判を待つだけの身で、悠さんはとっくに何かを決めていて……

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