122 / 298

お墓参り[2]

赤信号に切り替わって、車がゆっくりと停車する。 「悠さん、コーヒー飲む?」 「いや、大丈夫だよ。ありがとう、皐月」 悠さんは笑顔で頭を撫でてくれると、すぐに前に向き直った。 「ううん、どういたしまして」 お礼を言われたことが嬉しくて、思わずにやついてしまった。……んだけど。 「……あの、悠さん…?」 ハンドルに置かれたのとは逆の左手。それがなんで、俺の太ももをやらしく撫で上げてんだろう……。 「どうした?」 どうしたじゃないよ! 内腿をなぞっていた指先が、徐々に中心へと近付いてくる。 「───ひゃん…っ」 トントンって、からかうみたいにノックされた。 「───前っ、ちゃんと前っ、見ててっ」 リュートさん達が居る手前、直接触るなって言えないのが辛い。 反対に、二人っきりだったら触られても文句言ったりしなかったかも…だけど。 「見てるよ。どうした?おかしな皐月だな」 おかしいのはそっちだーっ!! 二人っきりじゃないんだぞ! 気付かれたらどうすんだよ! 必死の抵抗を試みようとするも、一瞬で解されてしまったソコのせいで身体に力が入らない。 「運転に集中してください…」 ほら、声まで弱々しくなっちゃった。 もーっ、ばかばかーっ! 声には出せずに足をばたつかせていると、 「いいなぁ、皐月くん…」 後ろから、リュートさんがぼそっと呟いた。 何に羨ましがられてるんだ? 「こーたぁ」 甘えるように夏木にしなだれかかる。 「リュートさん。俺、人前ではヤんないよ」 言葉とは裏腹に、夏木は優しい手つきでリュートさんの頭を抱き寄せる。 ───って! バレてんじゃん!気づかれてんじゃん! 悠さんのばかーっ!! 「ひゃぅっ」 むぎゅっとソコを握った手が離れていくと同時に、信号が青に変わってゆっくりと車が発進した。 ヒドイ…、変な声出ちゃったじゃんかー! 運転中で危ないし、攻撃できないからジトーッと視線だけでも責めてやる。 「どうした?運転中の悠さんに見惚れてるのか?」 ダメだ!全然(こた)えない…! 「もー!真面目に運転して下さい!」 「運転中は真面目ですよ」 「停まってる時も!」 「はいはい。皐月はいつまで経っても初心(うぶ)で可愛いなー」 …恥ずかしい。なんだもうこの人は! 初心とかじゃなくて、人前だってことを考えろ!! 「それに引き換え…、夏木、お前は大変だな。リュートは淫乱だから」 「……はぁっ!?」 何を言い出したんだ悠さんは!? いきなりリュートさんに変な言い掛かりつけ出して!リュートさん、とんだ飛び火じゃん! 「あはは。そーっすね」 夏木!お前も恋人にヒドいこと言われてなに笑ってんだよ!! 「兄さん、功太、それはどういう意味?」 リュートさんがほっぺをぷーっと膨らませる。 ほらほら、こんな可愛い人が淫乱とか、そんなわけ無いだろ。 「そーだよ。なんで2人共、リュートさんにそんなヒドいこと言うの!」 「ん?なにが酷いんだ?本当のことだろう」 「ほんとな訳ないじゃん!」 全力で抗議すると、悠さんは前を見据えたままクッと笑った。 感じ悪いなぁ、もう。

ともだちにシェアしよう!