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お墓参り[2]
赤信号に切り替わって、車がゆっくりと停車する。
「悠さん、コーヒー飲む?」
「いや、大丈夫だよ。ありがとう、皐月」
悠さんは笑顔で頭を撫でてくれると、すぐに前に向き直った。
「ううん、どういたしまして」
お礼を言われたことが嬉しくて、思わずにやついてしまった。……んだけど。
「……あの、悠さん…?」
ハンドルに置かれたのとは逆の左手。それがなんで、俺の太ももをやらしく撫で上げてんだろう……。
「どうした?」
どうしたじゃないよ!
内腿をなぞっていた指先が、徐々に中心へと近付いてくる。
「───ひゃん…っ」
トントンって、からかうみたいにノックされた。
「───前っ、ちゃんと前っ、見ててっ」
リュートさん達が居る手前、直接触るなって言えないのが辛い。
反対に、二人っきりだったら触られても文句言ったりしなかったかも…だけど。
「見てるよ。どうした?おかしな皐月だな」
おかしいのはそっちだーっ!!
二人っきりじゃないんだぞ!
気付かれたらどうすんだよ!
必死の抵抗を試みようとするも、一瞬で解されてしまったソコのせいで身体に力が入らない。
「運転に集中してください…」
ほら、声まで弱々しくなっちゃった。
もーっ、ばかばかーっ!
声には出せずに足をばたつかせていると、
「いいなぁ、皐月くん…」
後ろから、リュートさんがぼそっと呟いた。
何に羨ましがられてるんだ?
「こーたぁ」
甘えるように夏木にしなだれかかる。
「リュートさん。俺、人前ではヤんないよ」
言葉とは裏腹に、夏木は優しい手つきでリュートさんの頭を抱き寄せる。
───って!
バレてんじゃん!気づかれてんじゃん!
悠さんのばかーっ!!
「ひゃぅっ」
むぎゅっとソコを握った手が離れていくと同時に、信号が青に変わってゆっくりと車が発進した。
ヒドイ…、変な声出ちゃったじゃんかー!
運転中で危ないし、攻撃できないからジトーッと視線だけでも責めてやる。
「どうした?運転中の悠さんに見惚れてるのか?」
ダメだ!全然堪 えない…!
「もー!真面目に運転して下さい!」
「運転中は真面目ですよ」
「停まってる時も!」
「はいはい。皐月はいつまで経っても初心 で可愛いなー」
…恥ずかしい。なんだもうこの人は!
初心とかじゃなくて、人前だってことを考えろ!!
「それに引き換え…、夏木、お前は大変だな。リュートは淫乱だから」
「……はぁっ!?」
何を言い出したんだ悠さんは!?
いきなりリュートさんに変な言い掛かりつけ出して!リュートさん、とんだ飛び火じゃん!
「あはは。そーっすね」
夏木!お前も恋人にヒドいこと言われてなに笑ってんだよ!!
「兄さん、功太、それはどういう意味?」
リュートさんがほっぺをぷーっと膨らませる。
ほらほら、こんな可愛い人が淫乱とか、そんなわけ無いだろ。
「そーだよ。なんで2人共、リュートさんにそんなヒドいこと言うの!」
「ん?なにが酷いんだ?本当のことだろう」
「ほんとな訳ないじゃん!」
全力で抗議すると、悠さんは前を見据えたままクッと笑った。
感じ悪いなぁ、もう。
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