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引っ越し[2]
今日は引越しの日。
まさか生きている内に住めるだなんて思いもしなかった、俺には分不相応な高層マンションの最上階から、お馴染みのローズと会社のある街へと転居する。
ローズの入るビルは、地下駐車場、1階がコンビニ、2階が美容院、3階がローズで、4階が貸スクールスペース。5階から7階までが賃貸のマンション部分になっている。
引越しで一部屋空いて、悠さんが「ローズの上に越すか?」って冗談言ったのを真に受けて、俺が「越す!」って答えちゃったのが先々月の話。
そうしたら悠さんは「しょうがないな…」って笑って、すぐにクリーニングだけじゃなくて、リフォームまでしたりして。
気付いたら引越の手続きもぜんぶ済ませてくれてた。
俺には分不相応なのは、此処だけじゃない。
悠さんだって、俺には勿体無い人だ。
芸能人だって大好きな『青年実業家』って肩書を持ってて、見た目だって。
背が高くてスタイル良くて、顔もカッコイイし声も好き。
なのに中身だって最高だ。
優しくて、頭が良くて、料理も上手い。それから、エッチも凄いし……何より俺を大切にしてくれる。
こんな人を大事にしなかったら、俺絶対に罰が当たる。
「ありがとうございました!」
カチャリ、とオートロックの閉まったドアに頭を下げる。
悠さんはクスリと笑って、
「ありがとうございました」
俺に倣って頭を下げてくれた。
手を繋いでエレベーターに乗り込む。
このエレベーターは、搭乗時間が長いけれど、昇りの際は途中階で停められることが滅多に無い。
そんなことを理由に、この密室空間では悠さんから頻繁にイタズラを受けていた。
勿論って言うかなんて言うか……性的なやつだ。
一度は堪え切れずに、挿入寸前まで行ったことがある。
扉の内側を中心に三面が鏡張りで、更に道に面した一面上半分がガラス張りだっていうのに。
膝までパンツをずり下ろされて、おしりにスリスリ擦られた。
硬化ガラスだからこっちから見えても外からは見えないだろう。(本当か!?)
ガラス部分は腰より上だから大丈夫だろう───と言うのが悠さんの言い訳だ。
が、腰から下全部隠れてるのは俺だけで、悠さんのはギリ見える位置に付いちゃってるじゃないか!つか、勃ってたらカンペキ見えちゃってるっつーの!
だけど、そんなハラハラの想い出も今は愛おしく感じられて……
いつ誰が乗り込んで来るかわからない下りエレベーターの中、俺は自分から悠さんにキスをねだった。
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