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引っ越し[3]
新居の前に到着すると、引越のトラックから荷物が運び出されている最中だった。
「お疲れ様です」
「お疲れ様です!」
悠さんの後に続けて業者さんに挨拶をして、エレベーターで7階へ上がる。
今回は空き部屋が出たからって理由だから偶然なんだけど、会社もビルの一番上って言ってたし、悠さんはよくよく最上階に縁のある人だ。
天守閣にいるお殿様みたい。
新居には先にリュートさんと夏木が行ってくれている。
「俺 定期あるから先に電車で行ってるよ」
そう言ってたのに、
「最後なんだから、2人でゆっくりしておいで」
って、リュートさんが提案してくれた。
リュートさんってやっぱり、優しいお姉さんみたいだ。
…って思ってることバレたら、いくら何でも怒られそうだな。
リュートさん、前に、「髪長いけど、実際オネエなんですか?」って訊かれて、その場では笑って否定してたけど、後で枕を壁に投げつけて怒り狂ってたって夏木が言ってた。
俺も、悠さんのお嫁さんだからって理由だけで、実はオネエ?とか訊かれたら怒っちゃうかもしんない。
勿論、オネエや女装家、ドラァグクイーンやニューハーフの人はそれはそれでいいんだ。
だって、そうなんだもん。
自分がそうしようと無理してそうなったわけじゃない。
そうなんだから、それが自然なんだ。
悠さんの会社のオネエの社員さんに、一度会った事がある。
見た目短髪の男の人だったから、急に「ヤダァ、社長!その子が皐月ちゃん!?」って食いつかれた時には、その勢いにちょっとビックリしちゃったけど。
お菓子くれたし、面白くて良い人だった。
この前会った悠さんの出資先のオトナの玩具会社の女装家のリンナさんも、面白くて優しい人だった。
グイグイ来られ過ぎて、モニター品押し付けられそうになった時はちょっと引いちゃったけど。
赤瀬さん目当てのニューハーフのお姉さんも、彼のお店のカウンターに座って、調理してる赤瀬さんをうっとり見つめてるトコとか、可愛いなぁって素直に思った。
だから、彼女達がどうこうって事じゃない。
男が好き(好きな男の人がいる)=女性脳
ってトコだけ、違うんだ!ってハッキリして欲しいんだ。
抱かれてる時だけはもしかしたら女の子みたいになっちゃってるのかも知れないけど、でも、俺もリュートさんも、普段は立派に男なんだから!
「……皐月くん?」
リュートさんに声を掛けられてハッとする。
どうやら考え事し過ぎてて、拳を握りしめながら立ち止まっちゃってたみたいだ。
「あっ…、すいません!今日はお手伝いに来てもらってありがとうございます」
お辞儀をすると、リュートさんは「いいえ」と首を横に振ってから苦笑する。
「玄関、邪魔になっちゃうから中に行こうか」
「はい。…あっ、すみません!」
笑顔で応えてくれる業者さんに頭を下げて、リュートさんに手を引かれて中へと進んだ。
先に中に入っていた悠さんは、リュートさんに替わって業者さんに指示を出していた。
俺も邪魔にならない限り一緒にやりたかったんだけど、
「皐月は怪我するといけないから隅の方で待っていなさい」
と言う意味の分からない指令により、邪魔じゃないところを探して縮こまった。
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