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引っ越し[4]

「おつかれー」 頭の上に硬い物が置かれて、見上げる。 「あ、夏木も今日はありがとう。せっかくの休みにごめんな」 「いえいえ。これ香島さんから、缶コーヒー」 頭から重みが消えて、目の前に茶色の缶が差し出された。 てか、これコーヒーじゃなくてカフェオレ缶じゃん。前も発泡酒をビールって言ってたし。 相変わらず夏木は大雑把だよな。 「そう言や夏木、O型だっけ」 独りごちると、お前もO型だろ!と笑って返された。 「あ、そだ。お昼さ、」 カフェオレ缶のフタを開けながら訊ねる。 「悠さんが一緒にどうですか?って。片付いてないから外行って食べるんだけど、お礼にご馳走させてってさ」 「あ、マジ?んじゃ、いいモン食わせてもらおう」 「じゃあ、悠さんに言ってくる!」 リビングから廊下に出ると、玄関先で業者さんに指示を出してるリュートさんの姿を見つけた。 悠さんは……、と開いている部屋を見まわって2つ目、悠さんの書斎で運び込まれてくる棚の位置を指定している悠さんが目に入る。 書斎と言っても、そこはほぼ仕事関係の物だったり本棚だったりを収納するためだけのスペースとなっている。 前の家の時も、元々は書斎で仕事をしていたらしいんだけど、俺が越してからは書き仕事はダイニングテーブル、読む仕事はリビングのソファー。 切羽詰まった時でもない限り、俺を隣に置いてくれてる。 「ゆーさんゆーさん」 お忙しいですか?と訊ねると、おいでと手招きしてくれた。 「どうした?落ち着かないなら夏木と下で休んでていいぞ」 「そんなことしてたらリュートさんが落ち着かないよ」 俺の冷静な突っ込みに、確かに、と苦笑する。 「夏木が、いいモン食わせてって」 「ん、わかった。伝言ご苦労様。ここは危ないから、それまでまた向こうで夏木と待っていなさい」 「はい!」 右手を上げて返事をすると、本がいっぱいのダンボールを運び込む業者さんを待って、書斎を後にした。

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