152 / 298

馴れ初め[1]

【夏木Side】 母さんの手伝いに立ったリュートさんのことが気になって仕方ない。 飲んで待ってろって、昼間っからビールを用意されて、親父と壮太と3人、グラス片手にツマミに出されたゴボウの素揚げを七味マヨに絡めながら食って。 涼太は、未成年の奏太に付き合って、ジンジャエールを口にする。 そう言や会社の飲み会でも、上司が未成年に「ジンジャエールくらい飲みなさい」って言ってるけど、ジンジャって結局酒じゃないじゃん?あれ、なんか意味あんのかな? そんなことを考えながら、やっぱりハラハラしながらキッチンの様子を伺ってると…… 「功兄っ、馴れ初め聞くーっ」 奏太が隣にトスンと移動してきた。 「は?なに?」 「なに、じゃないよー。ドコであんな美人と知り合ったんだよーっ」 興味津々に覗き込まれる。 つい、ヨシヨシ、と頭を撫でてしまう。 壮太は俺と似てて男臭いけど、涼太と奏太は中性的でちょっと可愛い。 って、いやいや、こいつらは弟だから、やましい気持ちは微塵も無い。 微塵も無いんだから、微妙な顔してこっち見てんじゃねーよ、壮太! 「父さんも知りたいな、功太」 「え、そう?」 人の恋愛話なんか聞いても、楽しいことなんか別にねーと思うけど。 特にノンケの人間がゲイの恋愛事情になんか興味沸かないだろ。 興味本位で聞きたくなる、とかってのはあるかも知んねーけど。 けどまぁ、親父が知りたいってんなら、話さないわけにもいかない。 あー…、何処までならオッケー? リュートさんがゲイバーのマスターっつーのは、言ったら嫌がるかな…? ゲイバーつーと、オカマバーと一緒くたにする奴多いもんな。 壮太なんかモロにそのタイプだろ。 普通とちょっと違う俺たちの恋愛やリュートさんの状況、家庭事情。 何処まで話してもいいのか、ちょっと悩む。

ともだちにシェアしよう!