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馴れ初め[2]

【夏木Side】 「会社の友達と行ったバーのマスターが、リュートさんだったの。そんでまあ、そうこうあって、こういう事に」 「功兄、流石に端折り過ぎでよく分からない…」 涼太にそういう困った目で見られると、ちょっと弱い。 「バーのマスター相手に、お前よく物怖じせずに手ェ出せたなー。相手も男好きかどうかなんて分かんねーだろ?」 2本目のビールに手を出した壮太が、脚を投げ出すよう座り直しながら訊いてくる。 「いや。だってリュートさんの店ゲイバ……あー…」 ヤバイ、口走ったと思った時にはもう、食い付かれてた。 「お前、ゲイバーに友達と行ったって、それ友達じゃなくて……」 「いやっ、それは友達!マジ友達!」 「んな訳あるか!」 「マジで!そいつノンケだし!」 「のんけ…?」 「ストレート───あの…、女が好きな男の事」 なんでこんなこと家族に説明しなきゃなんねーんだよ、俺は……。 なんだか惨めな気分になってると、涼太が気遣わしげに顔を覗き込んできた。 弟たちは可愛い。ヨシヨシ。 「んで、なんやかんやで、」 「そのなんやかんやを聞かせろっつーの」 ホントにこいつは涼太と奏太の兄弟か?ほんっと壮太は可愛くねーなあ。 同じ年上でも、リュートさんはあんなに可愛いのに。 「まあ…初めて行った時はなんもなく……まあ、1杯ご馳走してもらったけど」 「その、ノンケのオトモダチに?」 ……信じてねーな。広川はマジでノンケなのに。 「いや、リュートさんに」 「は?なんで!?」 「だからさ、お詫びにっつって。ちょっと会社に戻ってる間に、ツレがリュートさんの従兄に攫われて」 「攫われて!?」 「結局、今その友達、そのイトコのお兄さんと付き合ってんだけど」 「いや、待て!」 「あー?続き話さないでいいワケ?」 「いや、続きの前に、友達ノンケなんだろ?」 壮太はビール瓶の王冠を2個、卓上に並べて置く。 「これお前、これノンケ」 すっかり言葉を使いこなしてるのは別に良いんだが、広川のことをノンケって呼ぶのはやめてもらえないだろうか。 「んで、お前はノンケが好きでゲイバーに連れてった」 「……はあっ!?」 なんだ!?なんでバレてんだ、そんな事まで!! 俺がメチャクチャ焦ってんのに、壮太はなんら気にすることもなくもう2つ王冠を卓上に上げる。 「で、これがリュートさん。お前が居なくなってる間に…」 俺の王冠、撤退。 新しい王冠が広川の王冠に寄っていく。 「これお兄さん、これ女好きなノンケ。んで、なんでココがデキちゃうんだよ!?」 カツンカツンって、金属音。 広川と香島さんの王冠ぶつけんな! あの2人、マジ目の前でそんななんだよ。見せられてる方は恥ずいんだよ。独り者時は更に辛いんだよ。 「いや、なんかその人スペック超高くってさ。超イケメンで、背も185cmあって、んで青年実業家なの。あの人に口説かれたら男でもクラッとくるんだって。んで、広川は超素直で純粋な奴だから…」 「広川っつーの!?お前の元カレ」 「違う!広川には片想いのま……ごほっ、それはもうどーでもいいの!そこら辺マジデリケートなとこだから、リュートさんも気にするから」 なんだよコイツは、俺達の馴れ初め聞きたかったんじゃなかったのか? 広川のことはいーだろが、もう終わってんだし! 「そっから、半年後ぐらいにもう一回リュートさんの店に行ったんだよ」 「ほうほう」 こいつの相槌イラッとくんなぁ…。 「で、そこで広川が香島さんと付き合ってるって知って、俺が勝手に失恋したの。広川とはマジなんも無かったの。 その後はまあ、誰かいい人見つかんねーかなってリュートさんの店に通ってて」 「功兄、いい人いたの!?」 「1人な。いいかなーって人がいたんだけど……」 その人と店から出ようと思っていた矢先、 ─── 功太、この後僕に付き合ってくれる?淋しいんだ。一人で居たくない…… そう耳打ちされて誘われたことは、流石に親父と弟達の前では言えない。 ヤバイ色っぽかったよなぁ、リュートさん。 囁かれただけで俺、勃っちゃったもん。

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