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馴れ初め[3]
【夏木Side】
「えーっと、…いやー……、ほら、その時俺既にリュートさん目当てに通ってたからさ、結局そっちにいかなかったっつーか…、駅までは送ってったけど」
なんとか誤魔化しながら説明すると、奏太が嬉しそうに腕に抱き付いてきた。
「そうなの!功兄って男にもモテんだー、スゲー!」
なんでか尊敬のまなざしを向けられる。
「いや、モテねーし、つか何?俺女にもモテねーけど」
「えー?うふふ~っ」
「なんだよ、グフフって。変なヤツ」
「グフフなんて言ってなーい!」
ボカボカっと胸を叩かれた。
なんだこのほんわかする気持ちは。これが弟萌えってやつか?
「………カナ、逃げろ」
「弟に手ェ出さねーよ!ゲイなめんな。男だったら誰でもいい訳じゃねーよ」
「え、そーなん?」
「そう!テレビの人たちの所為でそう思われてんのかもしんねーけどな、あんなんテレビパフォーマンスで男にキャーキャー言ってんだけだろ。女好きな男にだって好みとかあんだろ?俺達にもそーいうのあんの。俺は今、リュートさんにしか萌えねーの」
「えー!じゃあリュートさん、俺には萌えねーの?」
「萌えねーよっ!」
まったく……油断も隙もないヤツだ。
こいつ、ノンケじゃなかったのか?
もしかしてバイか?
つか、オンナいたよな、確か。
「リュートさんにちょっかい出すなよ」
「不本意だけど俺、お前に似てると思わねえ?」
「思わねえ!」
酒飲んでっし、リュートさん美人だし、不本意だけどコイツ俺に似てるし………壮太は危ない!!
薄笑う壮太を睨みつけてると、
「功太ー!ティッシュ持っといで!」
母さんに大声で呼ばれた。
なんだ?ティッシュ?
玉ねぎでも切ってて鼻垂れてきた?
涼太が渡してくれたティッシュケースを持ってキッチンに移動する。
───と、リュートさんが、泣いていた。
母さんがティッシュを一枚リュートさんの鼻に当ててかませる。
なんで、泣いてるんだ…?
ヤなこと言われた?
俺が傍にいなかったから、傷付けられた?
「母さん、リュートさん泣かした?」
「ああ、泣かしたねえ」
「なんで泣かすんだよ!」
「あっ、違う違う、功太!」
食って掛かった俺を、リュートさんが慌てて止めた。
「お母さんが嬉しいことばっかり言ってくれるから、僕が勝手に泣いちゃっただけなんだよ。ごめんね、年上のくせに泣き虫で」
「え、そうなの?」
少し恥ずかしそうに笑ってみせる。
綺麗な笑顔だ。無理して笑ってる訳じゃない。
───そう、だよな……。
あんな風に受け入れてくれた母さんが、リュートさんを虐めるなんてあるワケねーじゃん…。
母さんの姿を正面から捉える。
……なんだよ、嬉しそうな顔して。
俺が大学受かった時より、もっと笑顔じゃねーかよ…。
「疑ってごめん。それから……ありがと…」
母さんに向かって頭を下げた。
「なによ、お礼なんて言って」
母さんは俺を、カラカラと楽しそうに笑い飛ばす。
「リュートはうちの子なんだから、アンタがありがとうなんて言う必要無いの。そんな事より、功太!」
リュートさんが使ったティッシュを投げつけられた。
顔面に指を突きつけてくる。
「私にもう一人息子を作ってくれてありがとう。リュートのこと幸せにしなかったら、承知しないわよ!」
───っ……
受け入れてくれるだけで、有難いと思ってたのに……、なんだよ、コレは……
「……分かってるよ」
ヤベー…、リュートさんだけじゃなくて、俺も泣いちゃいそうだ。
「リュートさん、俺たちずっと、幸せでいようね」
ボロ泣きのリュートさんの名前を呼んで、おいでと腕を広げる。
泣いてるリュートさんを抱きしめるのは、香島さん風に言えば、俺だけの特権、だから。
なのにリュートさんは俺の目の前で、何故か母さんの腕の中に飛び込んで行く。
「なんで!?」
驚いて叫ぶと、母さんにニヤニヤと笑われた。
そしてリュートさんにも、クスクス笑われてしまった。
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