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美人と末っ子[1]
【夏木Side】
長卓の一番奥に親父、その両脇、廊下側に壮太、涼太、正面の窓側に俺、奏太。
リュートさんは、俺の隣じゃなく、何故か、台所に近い母さんの隣に腰を下ろした。
仲良くなってくれたのはいいんだけど…。
まあ、嫁姑問題発生しなかったのは万々歳。
けど、リュートさんが俺より母さんに懐いてんのは納得行かない。
「リュートさん」
「はい、お替りですか?」
か…かわいいお嫁さん……
っじゃなくて!
「なんでそっちなの。俺の横じゃないの?」
「あ、……うん。お母さんの隣がいいです」
ニコニコして、スゲー幸せそう。
俺、リュートさんにそんな顔させてあげられたこと、あったかな…。
なんか、ちょっとヘコむ。
「リュート君」
「はいっ、お父さん」
「ははは、こりゃあ、かわいいお嫁さんが来たなぁ」
父さんもデレデレだしさ。
そりゃあ可愛いよ。
その人は、俺の可愛いお嫁さんなんだもんよ。
んだよー……。
茶碗の飯をかっ込む。
「リュートさん、俺にもお替わりくださ~い」
「はい、壮太君」
壮太にまで愛想振らなくていいっての!
「奏太、醤油取って」
「はい。…功兄、機嫌悪い?」
覗き込んでくる奏太の目が怯えてて、自分があからさまに不機嫌になってたことに気付く。
「悪い。醤油、ありがとな」
笑顔を作って、奏太の頭を軽く撫でた。
奏太は安心したようで、嬉しそうな顔をして笑う。
うちの末っ子は素直であどけなくて、…やっぱり可愛いなあ。
その笑顔に癒やされてほんかわしてると、奏太が茶碗を置いて隣に体をピタッと合わせて座り直してきた。
「どうした?」
「だって、功兄ひさしぶりで嬉しいんだもん」
肩にスリ、と頬を寄せてくる。
そう言や俺、奏太がちっさい頃、よく膝に乗っけてご飯食わせてやったりしてたっけ。
絵本読んでやったり、風呂入れてやったり。
涼太も5歳下で可愛くてしょーがなかったけど、奏太は更にそっから4コも下で…。
小学校から毎日ランドセル背負ったまんま、産まれたばっかの奏太を見に病院通ったもんだ。
おむつも進んで替えてやったし、学校から帰っても遊びに行かずにずーっと奏太の面倒見てた。
お陰で、初めて喋った言葉が、母親を呼ぶ言葉じゃなくて、小学校に行ってた俺を探して呼んだ「こーた」だったとか。
そんな奏太が、今や高校生か……。
「あーっ、可愛いな、奏太は」
俺も茶碗を置いて、奏太の頭を抱き締めた。
ゲイだってカミングアウトしたのに、変わらない態度も嬉しい。
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