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美人と末っ子[2]
【夏木Side】
奏太は俺の腰にギュッと抱き付いて、胸に顔を擦り付けてきた。
昔と変わらない、甘えておねだりしてくる時の仕草だ。
「だったらうちに戻ってくればいいじゃん。俺、功兄と一緒がいいもん。俺と一緒の部屋でいいから!」
顔を上げて、見上げる瞳は一生懸命。
でっかい目で「おねがい」って必死に訴えてくる。
「んー、それもいいなあ」
可愛いなあ、マジで。
俺がゲイとか関係なく、こんな弟がいたら誰でも可愛いって思う筈!
頭をかいぐりかいぐり。
「じゃあ戻ってくる!?」
「───すみませんっ!」
腕の中の奏太の声を掻き消すように、離れたところからリュートさんの声が被さった。
顔を向けると、リュートさんは親父に向けて頭を下げていた。
「食事中にお行儀が悪くてすみません。席を…移動してもいいですか?」
リュートさんが窺うように顔を上げると、母さんが俺と奏太の名前を呼ぶ。
「なに?」
「なにじゃないの。奏太、リュートが入るから間空けなさい」
「えー、やだ!俺、功兄の隣がいいーっ」
駄々を捏ねて腕に掴まってくる弟が可愛い。
「え…と、リュートさん、さっき母さんの隣がいいって言ってなかった?」
「ここなら、お母さんのお手伝いがすぐに出来ると思って…」
えっ!?なんでリュートさん、泣きそうになってんの!?
「俺の隣なら空いてますよ」
すかさず口を挿む壮太。邪魔!
リュートさんは悲しそうな顔を横に振って、
「功太の隣がいいです…」
震える声で言った。
「えっ?俺なんか泣かせるようなことした!?」
立ち上がって、リュートさんを迎えに行く。
頬を膨らませてる奏太の頭を通り過ぎがてらひと撫で。
リュートさんはまた首を横に振ると、俺の差し出した手に掴まって立ち上がった。
「この子バカだから。ごめんね、リュート」
母さんが申し訳無さそうにリュートさんを見る。
てか馬鹿って。なんだよ馬鹿って、俺のこと?
すかさず涼太がリュートさんの茶碗と湯呑みを運んでくれる。
「奏太、ちょっとズレて。お茶碗置くから」
「ヤだーっ!」
バタバタ暴れる奏太を、涼太が宥める。
奏太はシュンとして、「りょーたのばかっ」と小さな声で吐き出した。
「功兄もばか…。全然帰ってこないくせに。…帰ってきた時くらい俺と遊べよぉ…」
弱々しい声音で訴えると、鼻をスン、と啜る。
………ヤバい、末弟が可愛過ぎるんですけど。
リュートさんがいなくて更に俺が理性というものを手放していたなら、この後俺は間違い無く高校生の弟相手に手を出していたことだろう。
弟萌え軽く超越したぞ、コレ。
よしよし、と兄の顔で萌えに蓋をして頭を撫でてやる。
「今度な。また今度帰ってきた時に奏太といっぱい遊んでやるから」
「ほんと?今度は泊まってく?俺と一緒に寝る?」
奏太の方ばかりを向いていると、シャツの下の方をクイッと引っ張られた。
あれ?リュートさん、もしかして弟相手に焼いちゃってる?
振り向くと、ウルウルした瞳で何かを訴えてくる。
なんだ…?泊っちゃヤダ?一緒に寝ちゃダメ、とかかな?
リュートさんの頭も撫でて、
ナニコレ、どう答えるのがベストなわけ?
うーん…と考える。
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