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いつもの朝の風景[2]

悠さんの心配性。 俺、そんな悠さんが言うほど可愛くなんてないと思うんだけどな。男だし! 悠さん、惚れた欲目のつまみ、最強に調節(セット)し過ぎだよ。 「う~ん…。じゃあさ、俺も気を付けるから、悠さんは俺と、リュートさんのことも気にしてて」 「リュートのことは夏木に任せておけば平気だろう?」 「だーめ!そんなこと言うなら、俺がリュートさん守るからな!」 「皐月は駄目だ。こういう事は男に任せておきなさい」 「だからーっ、俺も男だっつーの!」 話にならん!この人全然話しにならん!! 腰に手を当てて分かりやすく怒ってみせると、悠さんは「仕方ない奴だな」と笑って膨らんだほっぺを突付いてきた。 「分かったよ。お前の言う通りにしよう」 「うん!ありがとう、悠さん」 言い分が受け入れられたことが嬉しくて、安心して、思わず笑顔が零れた。 ちゅっ、て軽くキスすると、肩を押されてソファーに仰向けに倒される。 「なんですか?朝からハツジョーしちゃったんですか?」 朝日が差し込む明るい部屋で、なんとなく恥ずかしくて、また可愛げのない言い方をして見上げると、 「…悪い、皐月」 悠さんが壁に視線を向けて、俺の上から退いた。 「ん?」 首を傾げると、ほっぺを撫でたその指先で軽く抓られる。 「いひゃいっ、らに!?」 「そんな可愛い顔して煽るな」 「煽ってないよ!悠さんが勝手に押し倒したんじゃん」 抓られたほっぺが、今度は優しく撫でられる。 悠さん、やってること訳わからん! 「もう出掛ける時間なんだよ。……帰ったらな」 怒って暴れてると、耳に宥めるような優しい声が、吐息と共にスルリと入り込んできた。 低くて甘い声に、体がゾクリとする。 「じゃあ、いってきます。皐月」 玄関まで見送って、行ってらっしゃいのキスで送り出す。 鍵を閉めて、悠さんの足音が遠くなっていくのを聞いて、自分の下半身を確認した。 「…………はぁ…」 この状態で、会社行けない……。 「悠さんのばか、エロばかー…」 文句を言いながらリビングに戻って。 俺は出勤までの僅かな時間、できるだけ萎えることを沢山考えて体を落ち着かせなくてはならなかったのだった。

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