167 / 298
上書きと消毒[1]
【夏木side】
会社から帰ると、リュートさんが珍しく俺を追いかけて部屋に入ってきた。
「功太っ」
スーツの背中に抱きついてくるから、手を握って緩ませて、体を回転させて正面から抱きしめ返す。
「何かあった?」
肩に当てていた顔を上げ、視線を揺らすと、うんと頷く。
「初めて来たお客さんに、手を握られて……」
───かわいい! 何この人、超かわいいんだけど!!
「功太じゃないと、嫌なのに…」
そう言って瞳を潤ませるこの人は、歳上なのにまるで少女のよう。
最近リュートさんは、こういうちょっとした事でも、ちゃんと俺に話して助けを求めてくれるようになった。
もう、愛しくてしょーがない。
「どっちの手?」
訊ねると、背中に回っていた手を離し、おずおずと右手を差し出した。
「じゃ、上書き」
細くて長い、綺麗な白い指をにぎにぎする。
すべすべしてて気持ちいい。
左手の上に置いて、しばらく右手で撫でたり擽ったりしていると、
「…こーたぁ……」
切ない声で名前を呼ばれた。
スイッチ入っちゃった?
でもリュートさん、まだ仕事中だしな…。
「んじゃ、消毒だけな」
断わってから、その指に舌を絡ませる。
「はぅん…っ」
指がピクリと反応した。
指先を口に含んで、ピチャピチャと舌を這わせる。
指の股を舐め上げると、肩が震えて一層高い声が上がった。
そんな反応されると嬉しくなる。
気を良くして、指の関節を一本一本しゃぶっていると……
「こーたぁ…溢れちゃう…」
腰に、反応して熱くなったソコを押し当てられた。
……マズい。この人、仕事中だってこと忘れてないか?
ともだちにシェアしよう!