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コンビニ
1階のコンビニのお姉さんが、入口をそっと開いて伺うようにしてた。
視線の先に、一人の三十代くらいの男の人。
黒いジャケット、白いワイシャツに、ジーンズ。
会社員っぽくはないけど、その年代に今時珍しい服装でも無い。
「こんにちは」
挨拶をして、店に入る。
「あっ…、いらっしゃいませ!」
お姉さん───なつみさんが俺を見て、慌てて店内へと戻って行った。
この店は有名コンビニエンスストアのフランチャイズ店。
ビルが建ってから2店目にオープンした、古株の店子さんだそうだ。
1店目は勿論ローズ。
あんな水槽が埋まった壁のある貸店舗なんてそうそう有る訳がない。
悠さんが、リュートさんの為に建てたビルなんじゃないかな。そう訊いても笑って誤魔化して、本人は教えてくれなかったけど。
店長さんは…?と探していると、店の入口から見えない場所から、
「さっちゃん」
手をクイクイって、呼び寄せられた。
「ローズさんの件、聞いた?」
なつみさんと、そのお母さんの店長、春美さんが、こそっと話しかけてくる。
「はい。さっき香島さんから連絡があって…」
「そう、よかった。知らないで変なのにつけられたら、皐月くん、困るでしょ」
「はい。ありがとうございます」
「どうしたの、さっちゃん?」
いつも敬語なんて使わない、フレンドリー口調でいいからって言ってもらってる俺が、丁寧に話すことに疑問を覚えたんだろう。
なつみさんが、顔を覗きこんできた。
「大丈夫?さっきの男、ずっとあそこで張ってるのよ。恐い思いさせられた?」
首を横に振って否定する。
涙がポロリと零れ落ちた。
「あらっ、たいへん。大丈夫?どうしたの、皐月くん?いいこいいこ」
春美さんが心配して、頭を撫でてくれる。
「違うんです、俺、いいこじゃないんです。ごめんなさい」
2人に向けて、ガバリと頭を下げた。
「昨日、撮影があって、俺、会社から帰ったの、終わった後で…」
「皐月くん、こっちに来なさい」
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