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2人の店長さん
春美さんに腕を掴まれて、店の裏に連れて行かれた。
「ここで聞くわ。話してみて」
俺はイスに座らされて、春美さんも目の前のイスに腰を下ろした。
こんな所まで連れて来られて……、やっぱり、ローズの件で怒ってるんだろう。
当たり前だ。おんなじビルに入る店が問題を起こしたんだ。
ネットで話題になってる。悪いことで。
変な人も来てるかもしれない。
こんなの、営業妨害だ。
泣いたら言葉が上手く出なくなっちゃうから、涙を堪えて、…堪え切れそうになかったら、唇を噛み締めて、嗚咽はあげないように、俺は必死に説明した。
「ローズに行ったら、アイドルがいて、リュートさんにヒドイこと、してて…、だから俺、腹が立って……ブスって言って怒らせたの、俺なんです!迷惑かけてごめんなさい!」
「そう……」
「リュートさんは何も悪くないんです!被害者なんです!俺が…っ、俺が我慢きかなくて、ヒドイこと言っちゃったから…!」
「皐月くんは、リュートさんを守りたかったのね」
「───っ!?」
思いがけない言葉と頭に感じた温もりに、目を見開いて顔を上げた。
「やっぱり、皐月くんはいい子ね」
優しい眼差しが、俺の瞳に向けられていた。
「春美さーん。買い物に下りて来たんですけど、今なつみちゃんに言われて…」
ノック音が聞こえて、ドアの向こうから女の人が顔を覗かせた。
2階に入る美容院の店長の早苗さんだ。
「って、どうしたの、広川君!」
失礼します、と断ると、こちらに向けて駆けてくる。
「大丈夫!?変な人に襲われた!?」
「ううんっ」
慌てて首を横に振る。
早苗さんの美容院にも迷惑掛けちゃってる。
ちゃんと謝罪しなくちゃ。
「春美さん、早苗さん、本当にごめんなさい。俺の所為なんです。俺が悪いんです。リュートさんはただの被害者です。俺が種崎ゆかりにブスって言って怒らせちゃったんです」
ごめんなさい、と頭を思い切り下げた。
でもきっと、そんなんじゃ足りない。
椅子から下りて、膝をついて頭を下げようとすると、
「広川君、ブスなんて言ったの?」
早苗さんが、プフッと噴き出した。
「あらあら、皐月くんにしては随分と思い切ったこと言ったのねぇ」
「え……?」
2人の反応が予想外で、顔を上げる。
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