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愛とは

【悠Side】 「私も君を傷付けられればその何千倍の力で報復をする。愛とは時に残酷で、美しいばかりのものではないのだよ、風吹」 どうやら、探偵と事務員君も、パートナー同士だったらしい。 ならば、俺の想いがどの程度のものなのか、僅かでも伝わっただろう。 恐らく探偵は先ほど、それを確かめたのだ。 「ご依頼内容は、タレントからの訂正 及び謝罪を世間に晒すこと、そして、該当タレントの俗世からの排除。でよろしいでしょうか?」 物騒な物言いだが、悪くはない。 「ああ、当然のことながら、命にまで手を掛けることは出来兼ねますよ。所詮はしがない一探偵ですから」 「ええ。勿論です。彼女には生きて、反省して貰わなければ」 探偵の隣に腰かけた男の頬が引きつっている。 怯えさせてしまったろうか、と安心させるよう微笑みかけると、「すみませんっ」と頭を下げられた。 余程怖がらせたようだ。 「それに加え、担当マネージャーの社会的地位の格下げ、をお願いしても?」 「オプション料金を頂きますが?」 「金に糸目は付けません」 「では、サービスで所属事務所も格下げ致しましょう」 「それは…有難い」 しがない一探偵、と名乗る男が、そんなことまで出来るのか。 恐ろしい若者だ。 だが、嫌いではない。 それから細かく今後の予定を聞き、よろしくお願いしますと頭を下げて、探偵事務所を後にした。 車に戻り、スマートフォンを操作する。 電話の相手は皐月、と行きたいところだが、杵築先生へ報告と礼を伝えるのが先だろう。 依頼が成ったことを話せば、杵築先生はホッとしたようだった。 そして、賠償問題については引き続き依頼を受ける事を約束してくれた。 探偵も弁護士も、頼りになるものだ。 「杵築先生、宜しくお願いします」 見えない電波の向こう側へ、心を込めて頭を下げる。 先生はまだまだ堅い口調で、 「こちらこそ、宜しくお願い致します」 と甚く真面目に返してきた。 時刻は午後6時半過ぎ。 そう長く話していなかったつもりが、意外と時間を食ってしまった。 今日は通常の業務を何一つ片付けていない。 一度社に戻ってやれるところまでやっておきたいが……… それよりも皐月が心配だ。 どうせ仕事をしていても皐月のことが気になって捗らないだろう。 明日早めに出勤した方が仕事は進む。 昼間留守だったマンションの部屋も回らなければならないしな。 自分に良いように結論付けて、駐車場から車を出した。 皐月はまだリュートのところだろう。 夏木はもう戻ったろうか。 皐月はまた罪悪感にまみれて、泣いてはいないだろうか?

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