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夏木のいない日[1]
翌日、夏木は会社を休んだ。
有休を消化してしばらく休ませて下さいと申し出たらしい。
営業一課の佐々木課長に、「夏木どうした?アイツが居ないとなぁ」ってボヤかれた。
夏木は意外と営業部で頼りにされてるみたいだ。
うちの営業は、壁にグラフ貼って『今月の成績!』なんて大袈裟にやってるとこじゃないから噂程度でしか聞かないけれど、夏木は年上の男性に好かれやすいらしくて、営業成績も優れてるんだそうだ。
そう言えば、リュートさんも年上男性だっけ。
なんだかんだで悠さんも夏木のこと可愛がってるもんなぁ。
「今夏木、奥さんが大変で、出来るだけ一緒にいてあげたいみたいです」
奥さん…でいいんだよな?
夏木がリュートさんの籍に入ってるから、夏木がリュートさんの子供、が正しいんだろうけど。
でも、俺も悠さんの子供じゃないし、気持ちは完璧、悠さんの奥さん…だもん。
「アイツ、結婚してたっけか?」
課長が首をひねる。
「式は挙げてないけど、入籍は済ませてますよ。ほら、前に氏名変更届出してたでしょう?」
数ヶ月前に総務に提出された氏名変更届には、直属の課長、部長からの判も押されていたはずだ。
「あ、ああ、アレか。給料明細ぐらいしか名前変わってないから忘れてたわ。なんつった?」
課長はやっと思い出せたらしい。
「香島です」
「あれ?広川も香島姓に変わらなかったか?」
何故、自分の部下の名前は忘れて俺の名前を覚えてるんだ。
「うちの人と夏木の奥さんが従兄弟同士なんです」
「なんだ、2人共婿入りしたのか?逆玉か?お前ら」
「そんなとこです」
「かぁーっ、羨ましいな!あやかりてーわ」
なんでか羨ましい羨ましいと、頭をガシガシ撫でられた。
とげぬき地蔵の頭撫でて「頭が良くなりますように」ってやるのと同じようなもの?
「でも俺さあ、ずっと夏木は広川とデキてるもんだと思ってたわ」
突然のカミングアウト。
…まあ、最近、何故か社内の人に良くそう言われるけど。
俺、そもそも男に興味なかったし、この先も悠さん以外の男は恋愛対象にならないぐらい男っ気無いんだけどなぁ。変なの。
「夏木は今一番仲のいい友達ですけど、肉体関係はありませんよ」
「ブハッ、それ広川が言っちゃうの?」
課長が派手に吹き出した。
それ、ってどれだろ?
肉体関係があります、実は付き合っていました、って答えが聞きたかったのかな?
でも、事実とは異なるし。
「俺、うちの人以外は興味無いんで、これからも無いですよ。夏木もそうだと思います」
「ふぅん。ちなみに、夏木の奥さんってどんな人?」
「すっごく綺麗で可愛くて優しい人です」
「えー?夏木のクセに生意気な奴だなぁ」
……ジャイ○ンか!!
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