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夏木のいない日[3]
「佐々木課長、話は聞いてましたか」
うちの高山課長は一見冷たく見えるけど、俺が困ってるとすぐに気付いてこうやって助けてくれる。
入社したては恐くてずっと緊張してたけど、今なら2人で飲みにも行ける。
男男してないからかな?
ノンケの人にネコっぽいって言ったら失礼かも知れないけど、悠さんも課長なら安心出来るんじゃないかなって。
「仕方ない。じゃあさ、広川。最後にこれだけ」
やっと諦めたみたいだ。
最後だと言うし、顔を見上げて耳を傾ける。
「夏木に、辞めるなら早いうちに申し出ろって伝えといてくれる?」
「えっ…、夏木、辞めるんですか?」
「いや、分からないけど、勘…な」
夏木からは一言も「辞めたい」なんて聞いてないけど、直属の上司がそう言うなら、俺の知らないところで悩んでいたのかもしれない。
「……わかりました。会った時に伝えておきます」
頷くと、何故かフッと笑われた。
首を傾げると、頭を軽く撫でられる。
また、逆玉にあやかろうとしてる?
「なんですか?」
訊ねると、「いや、なんでも」と言ってまた笑う。
なんでも無いなら笑わないだろう。
ついジト目で見つめていると、佐々木課長は苦笑しながら口を開いた。
「夏木が休み中でも会うんだな?奥さんたちが焼いたりしないのか?」
「違いますよ。夏木じゃなくて、奥さんの方に会いに行くんです」
「お前んトコのは文句言わないの?」
「言わないですよ、別に」
「心広いな!つーかやっぱりお前、夏木とデキてんじゃねぇの?もしかして4P?」
「デキてないですってば!」
もーっ、佐々木課長しつっこい!
「夏木の奥さんには弟みたいに可愛がってて貰ってて、夏木もうちの人と………うぅん?」
悠さんと夏木、俺とリュートさんが水槽観て遊んだりしてる時2人で良く話してるの見るけど……、仲は、いいのかな?
悠さんは結構楽しそうに笑ってるけど。
………うぅ、佐々木課長が変なこと言うから、不安になってきたじゃないか。
もう俺、悠さんがいる時リュートさんと2人にならない。悠さん引っ張って水槽のとこ行こう。
悠さんが夏木のこと好きになっちゃったらいやだもん。
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