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両親の来訪

車に乗り込んで、父さんに住居者カードを渡す。 うちのマンションのセキュリティは結構しっかりしてて、このカードが無いと住居スペースはおろか駐車場にも入れないようになっている。 地下駐車場の入口の機械にカードを当てると、重たい鉄の扉が開く。 車が一台入るとすぐに閉まるようになっていて、よくある駐車場とは違い歩行者が侵入する隙も与えない造りだ。 表が商業施設になっているから、その分余計に安心して住んでもらう為にセキュリティを強固にしたんだ、って悠さんが言ってた。 勿論、エントランス側から入る時も、そして部屋の鍵もカードで賄われている。 使用履歴がデータとして残るらしい。 初めて聞いた時は、思わず「未来の道具か!」ってツッコんじゃったシステムだ。 「もう、皐月!どうしてすぐに教えてくれなかったの!」 急に母さんが助手席から後ろを向いて怒ってきたから、思わずきょとんと見返してしまった。 「リュートさんのことよ。お父さんに聞くまで知らなくて、お母さんとてもビックリしたのよ!」 「あ、うん…。えと、あんま大騒ぎしちゃうとリュートさんも気にしちゃうかなぁって」 母さんと父さんは、リュートさんとは直接的な面識はない。 だけど俺が電話の度に話して聞かせるから、もうすっかり知り合いな気になっちゃってるんだろう。 「今日は、それで来たの?」 「そうよ。もしかしたらお買い物にも出られないんじゃないかと思って、ちょっと奥まで行って農家さんの無人販売で新鮮なお野菜沢山買ってきたの。皐月にもお土産」 はい、とトランクから野菜の入ったビニール袋を取り出し渡された。 「あ、うん、ありがと」 この袋でも結構ずっしり来てるんだけど、リュートさんに持ってきた野菜ってのは、……やっぱりその、ダンボール箱だよなぁ…。 父さんがダンボールを抱えて、 「皐月、ん」 それを突き出してくる。 ……俺に持てってことなんだろうな。 仕方なく受け取って、2人を先導して歩いた。 「マスコミや悪意あるファンがリュートさんを傷付けないとも限らないからさ、今ローズの3階には表からもマンション側からも入れないようになってるんだ」 エレベーターのボタンを押そうとすると、母さんが先に手を伸ばしてくれた。 「5階押してもらっていい?」 エレベーターで昇りながら、事情を簡単に説明する。

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