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家族
「リュートさん、ただいま!」
最近のお決まりの挨拶をして、ローズへ続くドアを開く。
「おかえり、皐月くん」
振り返って俺を見たのは、リュートさんだけじゃなかった。
「おかえりなさい、皐月」
「皐月さん、元気そうね」
「わわっ、小雪さんと麗さんだあ!」
カウンターに座る2人を見つけた。
悠さんのお母さんと妹──俺のお姉さんになってくれた人。
カウンターのテーブルには色とりどりの和惣菜が並んでる。
きっとこれ、小雪さんのお料理だ。
それから、カウンターに並んで座る初めての、母さんよりちょっと上ぐらいの年代の女性、大学生ぐらいの男の子、高校生ぐらいの男の子の姿を見つけた。
夏木が「俺の家族」って紹介するから、俺も、
「はじめまして、広川皐月です。リュートさんの従兄の、悠さんのパートナーです」
夏木の家族に頭を下げた。
母さんも俺の隣で、
「皐月の母です。夏木くんには、いつも息子がお世話になっております」
皆に会釈をする。
「いえいえ、うちの功太こそ、広川君にはご迷惑おかけしてばかりで」
まあ、そこからは大人の集まる場に有りがちな、挨拶合戦が始まるわけで。
主に、年長組。麗さんから上の人達で。
俺は、夏木の一番下の弟だっていう奏太 くんの、「あーっ!もしかしてノンケの広川さん!?」の一言で、年少組の会話に参加することになった。
って言っても、奏太くんと、夏木のもう一人の弟、涼太くんとの3人だ。
涼太くんは主に聞き役で、奏太くんの質問に俺が答える形になってる。
……夏木のヤロー、弟達に俺のこと、一体なんて話してるんだよ。
夏木はダンボールを開いてリュートさんに見せて、その野菜の量にリュートさんは驚いて、目を潤ませて母さんにお礼を言ってた。
多分、量じゃなくて、さ。気持ちが嬉しかったんじゃないかなって、そう思う。
「皐月~っ」
暫くすると大人組から抜け出してきた麗さんが、背中に抱きついてきた。
「麗さん、お正月振り」
「もう、正月以来 来ないんだもの。2月はどうなの?バレンタインは?チョコ取り来る?それとも送った方がいい?」
正月以来って、まだ2月になったばかりなんだけどなぁ…。
麗さんは悠さんよりも俺に逢えるのが嬉しいみたいで、「兄さんが忙しいなら1人でも逢いに来て」って言うんだけど…。
俺、1人で車運転するの怖いしなぁ。
電車で行ってもいいけど駅から遠いし。
それにきっと、悠さん、俺1人でなんて外泊させないよね。
俺も、休みの日や夜は出来る限り悠さんと一緒に居たいし!
だけど悠さんは、実家に帰るの渋るしなぁ。
「うん、と…、送ってもらえたら助かるかな」
そう伝えると、案の定眉を顰められる。
「俺もお返しにホワイトデー送るね。麗さんは何が欲しい?」
「皐月!皐月が来てくれれば何もいらないわ」
「あ…、うん、悠さんにお願いしておくね」
「別に兄さんはいいわよ。私迎えに来てもいいし」
あ……、麗さんが、弟馬鹿になっている………。
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