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ヤキモチ焼き
「皐月くん、お疲れ様。はい」
麗 さんにぎゅーってされてる俺に苦笑しながら、リュートさんが目の前にオレンジ色のカクテルを置いてくれた。
「ありがとう、リュートさん」
リュートさんは何もかも吹っ切れたような、曇りのない顔で笑ってる。
俺も嬉しいよ、リュートさん。
この一大事、夏木の家族に、ずっと上手くいってなかった麗さん、小雪さんまで来てくれてるんだ。
ついでに、会ったことのない俺の親まで。
皆、リュートさんのことを心配して駆けつけたんだから。
よかったね、リュートさん。
そう心で語りかけながら、カクテルグラスを傾ける。
「──ってコレ、オレンジジュースじゃん!」
「兄さんがね、皐月くんが寝ちゃうと淋しいから、自分が行くまでアルコールは与えないでって」
リュートさんがそう説明しながら、悪戯の成功した子供みたいな顔をして笑った。
「もーっ、俺お酒で寝たことないじゃんー」
文句を言うと、
「昨日、僕が寝ちゃった皐月くんを抱っこしてキスしてたのが気に入らなかったみたい」
そう言って、悠さんの怒った顔を思い出したのか堪え切れずにクスッと笑う。
「もー。他ならぬリュートさんじゃん。悠さんのヤキモチ焼きー」
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