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どうして?

「でね、皐月くんはなんで功兄のことフッたの?」 背後で夏木が「ブッ?!」と大袈裟に噴き出してる。 「奏太!」 「だってぇ…」 このままじゃ奏太くんがまた涼太くんに怒られちゃう、と慌てて口を挿んだ。 「かっ、奏太くんは、夏木のことが大好きなんだねっ!」 「うん!俺、功兄とちゅーしたかったんだ。多分ね、エッチもしたかったの。そーいう好きだったんだよ」 「あ…、えっ、あ……、う、ん……」 衝撃のセリフが聞こえた気がするけど……… 奏太くんの向こうの涼太くんと、振り返って夏木の表情を見る限りでは、俺の聞き間違えじゃないみたいだ。 「功兄はね、一番大好きなお兄ちゃんで、かっこよくって、優しくて、俺たぶんずーっと恋してたんだ」 「へ、…へぇ……」 「でもね、功兄にリュートさんって恋人が出来てね、かなり落ち込んだけど、でも今は俺にも涼太がいるから、もう大丈夫なの」 「あ、うん…、そうなんだ。よかったね…」 「うん!」 奏太くんはにこにこ可愛く笑ってるけど、───俺、今かなり深い夏木家の内部事情を聞いた気がする。 …忘れろって言われたら、そのように心掛けるけど。 夏木を振り返ると、顔面蒼白。 涼太くんを見ると、額に手を当て頭を抱えてる。 ……だよねぇ。普通なら、ぜんぶ内緒の話だよね……。 「でね、功兄はあんなにカッコイイのに、皐月くんはなんで功兄のことフッちゃったの?ね、どうして?」 奏太くんはその純粋な瞳を俺に向けて、心底不思議そうに首を傾げた。

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