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愛しい人
悠さん、まだ仕事なのかなぁ……
なんとなくスマホを触って手遊びしてると、それに反応したみたいにブルブル震え出した。
急いで画面を確認して、すぐに着信をタップする。
「お疲れ様、悠さん!」
『皐月も、お疲れ様』
低く心地良い声が、優しく耳に響いた。
『3階に着いたよ。開けてくれる?』
「はいっ、すぐに行きます!」
通話を切って、
「リュートさん、俺、悠さん迎えに行ってくる!」
母さんたちの後ろを走り抜けた。
「こら、皐月!室内で走っちゃダメでしょう!」
「はーい、ごめんなさい!」
住居スペースに続くドアを開けて、玄関からも飛び出して、
あっ、カードキー借りずに出ちゃった、と思い当たる。
ま、いいか。ピンポンして夏木にでも開けてもらえば。
階段に続く扉の前、コンコンって叩いてから、
「悠さん、いますか?」
そう訊ねると、
「いるよ。ただいま、皐月」
愛しい人の優しい声が、冷たい階段に響いた。
外気に触れて寒いはずの体が、内側からほっこり、あったかくなる。
「おかえりなさい、悠さん!」
解錠して扉を開 けひらいて、大好きな悠さんの胸にダイブ───っ、ととと……?!
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