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美人が5人
「夏木、どうした?」
悠さんは俺の腰から手を離して、夏木に視線をやる。
悠さんはもうおしまいでいいのかよー!
恨めし気に見上げると、頭をぽんぽんって宥められた。
「中にお義母さんもいらっしゃるんだろ?」
ご挨拶しなきゃな、って、大人の顔。
「実はうちの母親と弟たちも来てるんですよ。紹介させてもらっていっスか?」
「ああ、勿論」
うちの親に夏木の家族、それに……小雪さんと麗さんまでいるって知ったら、悠さん、ビックリするかな?
あの小雪さんが、リュートさんの為に駆け付けたって知ったら!
「おおっ、すごいな、美人が、1、2、3…5人も!って思ったら1人はうちの美雪か!」
部屋からあほなセリフが聞こえてきた。
あのお調子者が……!恥ずかしい。
「もうっ、お父さん!ちゃんとご挨拶してください!」
母さんに怒られた。ざまーみろだ。
「5人?」
悠さんが首を傾げる。
先を行く悠さんの背中を追い掛けて、俺は指折り数えてみせる。
「母さん、夏木のお母さん、リュートさん、それからね~」
「あら、悠。お帰りなさい」
扉の手前で悠さんの足が止まり、信じられないものを見たとばかりに固まった。
「なんで……」
「そんなの、リュートが心配だったから来たに決まってるでしょうが」
小雪さんの着物の肩に手を掛けて、麗さんが責めるように口を尖らせる。
その手前に座る俺の母さんが、笑みを深くした。
悠さんが話しても大丈夫って言うから、母さんは俺が知る香島家の事情を全部知ってる。
母さんも、喜んでくれてる?悠さんたちに、良かったねって、そう思ってくれる?
「悠さん、お帰りなさい」
まだ放心したような顔をして、悠さんは母さんに「ただいま戻りました」と会釈をする。
「お帰り、兄さん。なに飲む?」
「…取り敢えず、ウーロン茶を」
「了解」
リュートさんは悠さんの様子に、可笑しそうに笑みを零した。
「おい、悠、どうした?もう一人の美女に挨拶はいいのか?」
父さんが声を掛けると、悠さんはハッと意識を取り戻して小雪さんの隣に座る夏木のお母さんに向き直った。
夏木のお母さんは、「美女だなんて、ねぇ~」なんて手を横に振ってる。
背は低めでちょっとふくよかだけど、パーツパーツが整ってて、若い頃綺麗な人だったんだろうなってことが窺える。
なら、美女で間違いない。
なにより、あんなに可愛い奏太くんと涼太くんのお母さんなんだから!
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