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祭りのあとに

【夏木Side】 「皆、帰っちゃったね…」 リュートさんが、ポツリと言った。 一斉に階段へと姿を消す皆を見送って、玄関へ戻った俺を見つめて。 「んー。一気に静かになったね」 クスリと笑って答える。 母ちゃん連中はずっと何かくっちゃべってっし、奏太は一人ハイテンションだし。 ローズにあんなに人が入ってたのも、久しぶりだし、な…。 静まり返るローズへと足を進める。 「主婦が2人もいると、しっかり綺麗に片付けてってくれるんだね」 綺麗に片付いたカウンターを見て、リュートさんが言う。 「あー、なんか、いいっつっても手ぇ出して、ウザくなかった?」 俺はカウンターチェアに腰かける。 「お母さん?…ううん、全然。お母さんは本当の息子みたいに接してくれるし、それに皐月くんのお母さんも親戚のおばさんみたいでね…、楽しかったぁ…」 本物の親戚の伯母さんもお酒出す手伝いしてくれたし、とリュートさんは少しぎこちなく自分の隣に立った小雪さんを思い出して可笑しそうに笑う。 リュートさんはバーテンダーの立ち位置、俺は客側に別れているけれど。 カウンターを挟んでいても、前のような距離はもう感じない。 手を差し出せばすぐに握り返して、頬をすり、と擦り付けられる。 「急に静かで、淋しくなってない?」 「ううん。幸せで嬉しくて、今も心臓がバクバク煩くて」 胸に持っていかれた手には、言葉通りに強い鼓動が響いてくる。 リュートさんは口元を歪めて微笑むと、 「しあわせ過ぎて、死んじゃいそう……」 ポロポロと涙の雫を零した。 指先で拭うけれどそれだけじゃおっつかなくて、身を乗り出して涙を口で吸い取る。 「リュートさんさぁ……、こんぐらいで死んじゃうとか言わないでくれる?俺、これからもっと、リュートさんのこと幸せにする予定なんだから、さ」 「こーたぁ…っ」 ああ、ダメだ。俺の言葉の所為? リュートさんの涙はさらに激しく、ボロボロと溢れて止まらない。 俺は堪らず席を離れて、いつもは立ち入らないカウンター内に足を踏み入れた。 酒のボトルやグラス、割れ物の多いそこでリュートさんを抱き寄せて、 「ベッド、行こうか?」 耳にキスを落とすと、泣いている所為なのか、これから起こることへの期待なのか、真っ赤に染まった顔を俯けて、リュートさんは、 「うん…」 と小さく頷いた。

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