215 / 298
しあわせでいてね
2人でソファーに並んでコーヒーを飲んで、ほっと一息ついて。
マグカップを置いた悠さんの腕にギュッと掴まった。
「悠さん、ありがと」
「ん?なにが?」
顔を覗き込んで、頭をよしよし、って撫でてくれる。
「ホテル代、出してくれたでしょ?」
「ん……ああ、まあ、な」
言葉を濁して、お決まりのセリフ。
「こういう事は一番稼いでる奴に任せておけばいいんだよ」
でも俺は、それが当たり前になっちゃいけないと思うから。
「そう言ってくれると思ったけど、ね?やっぱり、ありがとう」
少し腰を浮かせて、頬にちゅって唇を寄せる。
今度は俺から顔を覗き込んで、
「ね、悠さん…、もっと欲しい?」
首を傾げると、
「一緒に風呂に入ろうか」
妖艶に微笑まれて、一瞬で顔が赤く染まりあがった。
俺が誘ってんのにーっ!悠さん、ズルいっ!
「もーっ、もおーっ!」
全然動揺させられないし、大人ってズルい!
俺も年齢的には大人の筈なのに、一生悠さんに勝てる気がしないっ。
足をバタつかせてると、フッと笑って、悠さんが立ち上がった。
「ほら、皐月。行くぞ」
そうして、手を差し出してくれるから。
「……はい」
悔しい気持ちなんてあっという間に引っ込んでしまって、俺はその手を掴んで、愛しい人を見上げて微笑う。
俺ってしあわせだなぁ、ってしみじみ感じながら……
リュートさんも同じように、夏木の腕の中でしあわせを噛みしめてくれてたらいいなって、そう思った。
ともだちにシェアしよう!