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失墜

『シシリエンヌ、センター種崎 嘘のツイート謝罪』 そのニュースが巷に流れたのは、あの日から6日後のことだった。 種崎ゆかり及び所属事務所は、事実とは異なるツイートをした事をマスコミへ一斉FAX、タレント、事務所ホームページにて報告、謝罪をした。 丁度夕方の情報番組が放送中の時間帯だった。 十数分後、本人のツイッターに、更に詳しく付け加えるツイートが上げられた。 『綺麗な人だったから、こっちから誘いました。 向こうは嫌がったけど、嫌な訳ないと思って無理矢理キスしました。 マスターはオネエじゃありませんでした。』 嫌々書いたようなその内容に、当然、種崎ゆかりのツイッターは炎上。 それ以降、ツイートが更新されることは無かった。 更に一週間後、朝の情報番組にて緊急速報が流れる。 『種崎ゆかり、覚醒剤所持で逮捕』 覚醒剤を常習して使用、他者にも売り捌いていたという。 自身のマネージャーに売り渡している現場を押さえられ、2人共に逮捕された。 その翌日、有名な写真週刊誌が種崎ゆかりの真実をスクープする。 何人もの一般人を誘い、一夜限りの遊びを重ねてきたと言うものだった。 同じタレント相手ではスキャンダルになり易い為、一般庶民を狙った。マネージャーもまたそれに加担していた、と記事にはあった。 過去、リュートさんのようにムリヤリ襲われそうになった人もいたかもしれない。 しかし週刊誌の取材に答えている数人の男たちは、誘われたことに喜んで応じたと言う。 隠し撮りと思わしき種崎のあられもない写真が数枚、紙上を飾っていた。 そしてまた約半年後、種崎ゆかりの所属していた事務所が億単位の脱税をしていたとして、社長及び幹部社員が数人逮捕。 他、所属タレント数名のスキャンダル発覚。大物タレント達の度重なる移籍など続き、事務所は1年以内に廃業へと追い込まれた。 悠さんが、種崎の吐いた嘘について謝罪させてくれた。 多分その小さな出来事から、色々な悪事が芋づる式に発覚しちゃったんじゃないかな。 確かにリュートさんを傷付けたことは許せないし、覚醒剤、脱税なんてもっての外。 …だけど、そこに至るまでにどうして彼らはそれを悪事と気付き、やめることをしなかったんだろう。どうして周りの人は止めてあげなかったんだろう、って……。 あのマネージャーは、タレントを止めるどころか協力までしてた。 クスリを回して欲しかったから? そんなことをしないで、ダメなことはダメ!って教えてあげていれば、違う未来もあったかもしれないのに…… そして、これは事件発生1ヶ月後位だったろうか。 ローズに、営業を妨害したとして、種崎の事務所から損害賠償金が払い込まれた。 その後、表の種崎ファン、マスコミ、野次馬も尽きた頃。 ローズは約1ヶ月半の休業、のち、常連さんたちからの熱心な働きかけも有り、営業を再開した。 だけどそれはまだ先のお話で、 種崎ゆかり謝罪ニュースの翌日、俺は再び……ううん、3たび…4たび? 営業部の佐竹さんに足止めを食らっていた。 と言っても、リュートさんが被害者の許されざる事件があったとは言え、約束を忘れていた俺が悪い。

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