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ゴスロリの悠さん
佐竹さんに、下で悠さんと落ち合うことになったことを告げて、一緒にエレベーターに乗り込んだ。
「夏木は来られないんですけど、俺の…その…パートナー?が、一緒にって言ってるんで、それでも良いですか?」
確か悠さん、人に俺のこと紹介する時、『パートナー』って言ってたよね。
うちの場合は結婚してるから、…う、顔がにやける……、えと、でも、いきなり『旦那さん』って言ったらビックリしちゃうよな。
皆、奥さんとか彼女って言ってくるしなぁ。きっと相手、女の人だと思ってるんだろうしな。
「あ…、ああ、それなら奥さんも安心だよな…」
快く受け入れてくれた佐竹さんに何も伝えずに驚かせてしまうのも忍びなくて、悩んだ末に、
「えぇっと…、奥さんって言うか、会ったらびっくりしちゃうと思うんで…」
そう伝えた。
エレベーターが1階に着いて、ゆっくりとドアが開いた。
ビルの外に出て、いつも悠さんが車をつける辺りへ移動する。
「どんな人が来ても驚かないで欲しいって言いますか…」
「広川の奥さん、そんな変わったタイプなのか?もしかして、ゴスロリ?」
「えっ、ゴスロリって……、絶対似合わない!」
佐竹さんが変なことを言うから、思わず想像しちゃってブッと吹き出した。
「いや、絶対ってことはないだろ」
「や、絶対です、絶対!」
「あー…、失礼だが、個性的な顔してるのか?女芸人みたいな」
「え?いや、全然!めちゃくちゃカッコイイです!整ってます!」
続けて、どんな人なのかと訊かれるから、悠さんのことを思いながら答える。
「背が高くて、声もいいし、見た目はもうね、誰も文句つけようも無いって、俺は思うんですよ。でね、優しくて、あったかくて、器がデカくて、頼り甲斐があって、」
「…広川、それ、まだ続くのか?」
「えっ?続きますけど…?」
途中で止められて佐竹さんの顔に視線を戻すと、お腹いっぱい、うぇっぷ…って顔……
「あ、…俺、惚気け過ぎちゃってました?」
「だな」
はは、と乾いた笑い。
俺も、えへへって、照れ笑い。
「ごめんなさい。俺、悠さん好き過ぎて」
「悠さん、って言うのか?」
「はい!香島悠さんって言います」
「そうか…」
「悠さんいつもね、美味しいごはん屋さんに連れてってくれるんですよ。今日はなに屋さんに行くのかなぁ」
「連れてってくれる…って、悠さんは歳上なのか?」
「はい、俺の8つ上で、34歳です」
「俺より上か…。てか良いのか?勝手に年まで教えて。女性は嫌がるだろう?」
「大丈夫ですよ~。だって悠さん───」
「───皐月」
名前を呼ばれて条件反射、笑顔で声のする方を振り返った。
車を停めて、悠さんが助手席のドアを開けてくれてた。
「悠さん!お疲れ様ですっ」
走り寄ると、「待たせたか?」って頭をヨシヨシしてくれる。
「ううん、だいじょーぶっ」
「彼が佐竹さん?」
頷くと、悠さんは佐竹さんの前まで歩いて行って、
「はじめまして、皐月のパートナーの香島悠と申します。皐月を何度も誘って頂いているようで、すみませんね」
柔らかな笑みを浮かべた。
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