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誠意には誠意で
ご馳走様でした、と俺がスイーツ用フォークを置けば、食事タイムはこれにて終了。
各々がまったりとくつろぎ始める。
俺は3杯目の赤ワインのカクテルを口にしながら、何故だかいつの間にか夏木と佐竹さんの間の席に座っていた。
「でさ、俺はともかく、やっぱり広川も辞めることにしたの?会社」
「えっ?なんで?俺辞めないよ?」
やっぱりって、なんだよ。
それに、なんで俺が辞めるって話になってんだ。
意味が分からなくて夏木をじーっと見つめると、溜息混じり、
「いや、だってさ…」
俺を挿んで反対側の佐竹さんへと視線をやった。
佐竹さん……?
首を傾げて今度は佐竹さんを見つめると、何故か佐竹さんは徐々に顔を赤く染めそっと目を逸らす。
「いや、そのウル目の上目遣いは犯罪だろう」
よくわからないけど、上目遣いになっちゃうのは佐竹さんの座高が高い所為だと思う。
確か、元ラガーマンで、身長190以上あるって言ってたっけ。
悠さんよりも高いんだもん。どうしたって見上げる形になっちゃうだろう。
「いや、だからさ。社の人達に知られたら、居辛くなるだろ、俺たちみたいのは」
「男同士で夫婦ですってこと?」
「そう。一般社会ってのは、ゲイに優しくない世界なんだよ」
そんなこと、悠さんからも何度も言われてるし、俺だって……実感はないけど、そこそこ理解できてると思う。
周りが寛容過ぎて、時々麻痺してしまいそうになるけれど。
だけど、夏木の言う事と今回のことが俺の中ではイコールにならなくて。
「あのさ、夏木…。俺、何度も佐竹さんに食事にって誘ってもらってたんだ。お前も知ってると思うけどさ、俺が何度ごめんなさいって断っても、じゃあもういいって怒ったりせずに、懲りずに誘ってくれる優しい人なんだよ」
「は?……あ、ああ…、なるほどな」
は?ってなんだ、は?って。佐竹さんに失礼だろうが。
仮にもお前、同じ部の先輩だぞ。
「だからさ、佐竹さんの誠意に俺も誠意で応えたいの!
おんなじ男なのにさ、パートナーがヤキモチ焼くから2人で食事は無理ですって、多分フツーに考えたら訳分かんないんだよ。
でもさ、悠さんに会ってもらえばわかってもらえるじゃん?俺が嫌で適当なこと言って断ってたんじゃないってこと」
「うん…、まあ、理解は…するだろうな」
歯切れの悪い夏木の態度にイラッとして、カクテルグラスを一気に傾ける。
底の方に強いアルコールが溜まってたみたいで、喉を熱い感覚が流れて落ちていった。
「だいたいさぁ、なつき~、おまえ、タイドわるいんらよぉ」
「えっ、いきなり?急過ぎねー?」
「ふふっ、少し強めに作っちゃった」
なんか、カウンターの向こう側からリュートさんの可愛い笑い声が聞こえる。
「はい、皐月くん、お替わりどうぞ」
「ありあとー」
リュートさんが空のカクテルグラスをブランデーグラスと取り替えてくれた。
カミュ・ナポレオンだ。悠さんが初めに口付かせてくれた、悠さんのグラスに入っていたお酒。
「夏木、お前が言いたいのは、俺が社内の人間にバラすんじゃないかって事だろう?なら安心しろ。言やぁしねーよ。ってかさ、お前なら言いふらせるか?……た相手が、男が好きだ、とか」
「……いえ。佐竹さん、疑ってすみませんでした」
「いいよ。俺もお前の立場なら、同じように疑っただろうしな。広川が特殊なだけだよ」
「功太……かっこいい…」
「えっ、リュートさん?なに?」
「自分の非を認め潔く謝罪する功太がカッコよくて、見惚れてた」
「リュートさん…?もしかして、酔ってる?」
「酔ってないよぉ。…んふふ~。まだ4本しか開けてないも~ん」
「って、それ、赤ワインまさか1人で!?」
「違うよぉ。さっきねぇ、皐月くんにもカクテル作ったからぁ」
「いや、それ100mlも使ってないだろ!」
「だいじょぉぶ。僕お酒弱くないから。これねぇ、飲みやすくて美味しいんだぁ」
「あーっ、もう!危ないからこっち来なさい。自分で出てこられる?俺迎えに行く?」
「ふふっ。掴まえに来て?」
「っ……あーっ!可愛いな、もう!」
なんか、リュートさんと夏木、2人で楽しそう……。
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