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とばっちり
後ろから膝の中に抱き込まれた。
首を思いっきり伸ばして見上げると、視界に男らしく突き出た喉仏と顎の下とが映る。
「ゆーさんっ、どこ行ってたの?」
「………」
ハァ…、と溜息を吐かれた。
「佐竹さんを下まで送りに行ってたんだよ。皐月こそ、リュートと何をしていたんだ?」
「んーとね…、たしか、スーツシワになるからって、リュートさんが脱がせてくれたんだ」
「シャツもか?」
「うん」
あ、でもぜんぶ脱いでないからやっぱりシワになっちゃうね。と腕を抜こうとすれば、「脱がなくていい」と逆にボタンをはめられた。
「リュートさん、広川に何してたの?」
あっちでも、夏木がリュートさんに似たようなことを質問してる。
「あ、ねぇ功太、皐月くんのおっぱい見た?ベビーピンクで可愛いんだよ」
「はっ?…あ、いや、見てない…けど」
「お前らは見なくていい!」
あ、夏木が悠さんに叩かれた。
「痛っ!香島さん、俺とんだとばっちりっス!!」
夏木、とばっちりなんだ。可哀想。
「あっ!そー言えばさっきもゆーさん、おれ置いてこっち来てた…」
ふと思い出して、振り返って見上げる。
「おれ、じゃまだった?一緒にいると、つかれちゃう?」
「そんな訳がないだろう」
おでこにおでこがコツンってぶつかる。
「お前が置きっぱなしの弁当箱開けて海老の尻尾食い出すから、慌てて片付けに行ったんだよ。行く前にきちんと断っただろう?」
「えー?おれ、えびのしっぽなんて食べないよっ」
「ほら、証拠」
悠さんはスマホを操作すると、俺の目の前にスッと差し出した。
俺の口から赤いハートが飛び出してる……
これか、エビの尻尾。
でも、
「なんでこんな写真撮ってんの…」
訊けば、
「可愛いだろ?」
って、何故かドヤ顔の悠さん。
訳分からん!
「兄さん、洗い物もしてくれたんだね。ありがとう」
キッチンから炭酸の瓶を手にしたリュートさんが戻ってきた。
……まだ胸はだけたまんまだし…。
乳首チラ見え、エロっちぃ。
「ありがたいと思うなら、皐月にチョッカイを掛けるな!」
「痛っ!」
そしてまた、何故だか夏木が頭をボコっとやられた。
なんだかんだで悠さんは、リュートさんに優しいと思う。
……う~ん。もしかしたら、タチの人に厳しくて、ネコの人に優しいのかも。
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