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ならば良し!
思えばあの頃夏木のヤツは、既に…まだ?俺のことが好きだったんだろう。
───夏木功太、恋人にはどうですか?
あの言葉は、半分冗談で、半分は本気…だったのかもな。
……夏木、キモい。
「ふふっ」
思わず口元を緩ませた俺の様子に、夏木に抱っこされたリュートさんが不思議そうに首を傾げた。
「いや、夏木キモ~いって思ったら」
「はっ?俺?なんで!?」
「功太は気持ち悪くないよ?」
「そう思っているのはお前だけだ」
「香島さんまでヒデェ!!」
俺の笑いが納まるのを待って、悠さんが正面から背中に手を回してきた。
「皐月、そろそろ帰るぞ」
抱っこで連れて帰ってくれるつもりなのかな?
「……帰るの?」
もう少し皆で話してたいな、と思いながら見上げると、少しだけ眉間に皺を寄せて考えるように黙り込む。
そんな表情もカッコイイなぁ。
「悠さん男前~、ひゅーひゅーっ」
「兄さんかっこいー、ひゅーっ」
変なテンションで悠さんに声を掛けると、珍しくリュートさんもフザけて乗ってきた。
「いって…!」
あ、また夏木が叩かれてる。
「冗談はさて置き、良かったら初お泊まりしていかない?皐月くん」
夏木の頭をいいこいいこって撫でながら、リュートさんが笑顔で訊いてくる。
お泊り……いいなぁ。楽しそう。
窺うように見上げると、
「危険分子と皐月を一緒のベッドで寝させられるか」
悠さんはリュートさんに尖った目を向けた。
「じゃあね、リュートさんと俺が両端に寝れば?」
くいくいって袖を引くと、また困った表情で口を閉じてしまう。
「えーっ、兄さんの隣に功太とか、功太がネコになっちゃいそうで嫌だなぁ」
「なんねーよっ!」
リュートさん、からかってるのか本気なのか…。
でも、夏木がネコになっちゃったら、ここ悠さんのハーレムになっちゃう。
「夏木、悠さんに惚れちゃダメだかんな!」
奪われないよう悠さんの体をぎゅっと抱きしめると、
「惚れねーよ!!」
全力で否定された。
「ならば良し!」
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