234 / 298
夏木の一歩目
「で、何する?トランプ?クイズ大会?」
ワクワクでリュートさんと夏木の方へ顔を向けると、
「怪談話?」
上からそんな意地悪な言葉が聞こえた。
「しないよっ、そう言うのって、話してるだけで霊がうようよ寄ってくるんだよ!リュートさんが危ないじゃん!夏木はいいけど」
もう、すぐそう言うこと言ってからかう。
むーん、と首を思いっきり上げて睨んでいると、
「リュートさんなら絶対、色情魔の霊に襲われるな」
今度は正面からおかしなことを言い出す奴。
「何言ってんの、夏木の変態っ!」
「功太の変態~」
リュートさんがクスクス笑っててちょっと楽しそうに見えるのは、…気のせいってことにしておこう。
少なくとも、夏木の言葉を肯定して笑ってる訳じゃないだろうしっ。
「トランプでもなぞなぞでもいいけど、……あの、香島さん、先にちょっと…いいですか?」
なぞなぞじゃなくてクイズ、と訂正を入れたかったけれど。
夏木のやつが矢鱈と真剣な顔をして悠さんを見つめるものだから、それが余計な茶々になってしまうような気がして、俺は思わず口を詰むんだ。
「なんだ?」
悠さんの落ち着いた声が、背中に振動を与える。
リュートさんが少し心配げに夏木を振り返る。
「先ほど、上司、営業一課長の佐々木に電話をしてきました」
「なるほど」
その言葉だけで夏木の言いたいことを理解したのか、悠さんが小さく答えた。
けれど夏木は言葉を止めずに、更に続ける。
「全て、話しました。そして、自分はリュートさんのことを守りたいのだと伝えました」
ともだちにシェアしよう!