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女装家の真実

リンナさんが持ってきてた子供服に下着から一式着替え終えると、突然ムギューッときつく抱きしめられた。 甘い香水の香りに包まれる。 「ああっもおっ、さっちゃん可愛い!可愛いわあ!メチャクチャにしたいっ!!」 「ひっ…!!」 危険!危険!この人危ない!! 声が男に戻ってる!! 「リュートちゃん、さっちゃん一晩借りて行くわね」 「やっ、やだーっ!!」 「リンナさん、怒りますよ。出禁にされたいんですか」 「あ、あらぁ…ヤダぁ、冗談に決まってるじゃないっ。リュートちゃんったら恐い顔しちゃってッ、イヤぁね~」 ウソだっ!冗談の力加減じゃなかった! 俺、潰されそうだった!! 「リンナさん、おとこのひとがスキなくせに…ヒクッ」 ぐしぐしと涙を拭いながら文句を言うと、当たり前の顔をして「さっちゃんだって男の子じゃない~」と笑い飛ばされる。 「あら、もしかしてワタシ、ネコちゃんだと思われてる?」 「え…、ちがうの?」 見上げて首を傾げると、リンナさんはもういつものちょっと陽気なお姉さんの顔に戻っていて、軽々と俺を抱き上げるとイスに戻してくれた。 「違うわよ~。ワタシどっちもイケるの。社長みたいな殿方にはリードされたいし、さっちゃんみたいな子はワタシがリードしてヒィヒィ言わせたいわぁ。3Pする?」 「しないっ!!」 ……そうなんだ。 俺、女装家の人やオネエの人って、みんな抱かれたい側だと思ってた。 …でも、そっかぁ。ニューハーフの人とは違って、手術で取ったりしてないんだもんな。 心は女性でも、身体は男性か。 俺、偏見持ってたんだ……。ごめんなさい。 「でも、あの…うしろでしちゃうと、前だけだと足りなくなっちゃったりとか…しないの?」 俺、もう悠さんに挿れてもらえないと、物足りなくて、何度前でイカせてもらっても疼いちゃってしょうがないもん。 そう思って訊ねると、 「あら、さっちゃんアナルセックス派なの?」 ニヤリってされた。 「え…?ちがうのもあるの?」 「ワタシはアナルは使わないわよ。一度挿れられた時痛くって!それ以来挿れられるのも挿れるのもNG」 「あー…そうなんだぁ…」 リンナさんのトーク、生々しくてちょっと恥ずかしい。 「さっちゃんは元々ノンケの子でしょ?お尻に巨根突っ込まれて、嫌悪感とかなかったのぉ?」 「え、えと…、その…」 「失礼ですが、先程から子供相手に聞かせるべきでは無いお話をされているようですが」 カツン、と革靴の足音と共に、硬い口調の声が返答に困る俺を庇った。 「あら、この子こう見えてもとっくに成人しているんですよ!」 「存じ上げております。しかし今はどう見ても幼児でしょう」 「見た目で言えば、リュートちゃんだって20代で通るけど、立派に30代のおっさんだもの」 「リンナさん、僕の年齢は関係無いでしょう?それに、執拗に皐月くんにベタベタしないで下さい」 「あんっ、もお。その冷たい目、ゾクゾクするわ」 リュートちゃん相手ならワタシがネコね、なんて品の悪い冗談を言って。 「リュートさんにヘンなこと言わないで!」 ペイっとリンナさんを突き放して、イスから飛び降りる。 「あら、ちょっと、さっちゃん」 手が追いかけてくるから、ダダっと走って、スーツの脚にしがみついた。 「たかやまかちょー、だっこ!」 見上げると、随分高い所にある高山課長の顔の、引き締めていた口元が緩み、次の瞬間その意外と力強い腕の中に抱き上げられていた。

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