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おじさん
それから俺は、ずっと高山課長の膝の上。
リュートさんは気になるみたいで、こっちをチラッ、チラッって何度も見てくる。
ズズズッ…ってジュースが終わる音が聞こえればすぐ、「おかわりはどうする?」って訊いてくれた。
「いいの?2回ものんで」
訊ねると、不思議そうな顔をされる。
「まだ兄さん帰って来ないみたいだから…。欲しくない?」
「ううん。でもね、いつもねる前にいっぱいのんじゃダメっていわれるの。2回じゃ、いっぱいにならない?」
「2回だと2杯だから1杯にはならないな」
リュートさんに訊いたのに、隣の佐々木課長が口を挟んでくる。
しかも、オヤジギャグだし!
「おじさん、サムイ」
えっ?あ、あれ?
こんなこと言うつもりじゃ無かったのに?!
イジメられる!絶対ゴリゴリされる!!
俺は頭への攻撃を危惧して、両手でバッと庇った、のだけど……
「梓~~、広川におじさんって言われた…!」
「6才相手ではアラフォーはおじさんでも仕方がないでしょう。彼のお父様より年上でしょうし」
攻撃するどころか、ショックを受けたみたいで向こうも頭を抱えてる。
「うんとねぇ、ぼくのおとーさんは、けいじさんなの。ワルモノ、バキューンってやっつけて、かっこいいんだよ!」
いや待て、何を言ってるんだ俺は!?
よりにも寄って、あの親父のこと褒めるとか!かっこいいワケないじゃん、あんなガラの悪いおっさん!!
あー、落ち込むー…、自分の発言に落ち込む~ー……。
「広川君、どうしました?」
「なんでもないですっ」
首を横にブンブン振って、自分に掛けられた父親を褒めるという呪いを払っていると、
チリンチリン───
ドアベルが揺れて来客を知らせた。
悠さんかも!
慌てて振り返るけど、全然違う人。
「急に動いたら落ちますよ」
高山課長が腰を抱き寄せて支えてくれた。
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