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ベストを探せ
かんっぜんに───頭きた!!
なんだこの男は!
相手のこと微塵も考えないで、自分のことばっかり!負担は全部受ける側に来るってのに!!
悠さんはそう言って俺のこと、凄く大事にしてくれんのに!
夏木だってそうだ。
関谷くんだって、涼さんだって、ほかの常連さんたちだって皆、相手を大切にしてるから、ローズに来るカップルのお客さんは、皆幸せそうに笑ってる。
「はぁ?誰、ゆうさんって。こんなガキに手ぇ出すとか、ソイツまともじゃねーじゃん」
「ガキじゃない!25だ!」
「……ボクちゃんねぇ、そう言う嘘は、せめて高校卒業してから言いましょうねぇ。あ、高校って分かる?」
…んのヤロウ……
俺は大学も卒業してるって言うの!
「なあ、オッサン。そろそろ手ぇ放してほしーんだけど。コレって暴行?なあ、暴行じゃねえの?」
「暴行ってのはな?ガキ。この子を無理矢理連れ出そうとしたテメエの行動のことを言うんだよッ!」
「ッ───痛ッテェ!!何しやがるジジイ!?」
「俺のことジジイだって、梓~。悲しくて泣きそうだから後で慰めてくれる?」
「事が無事に済めば、考えます」
「う~ん…。マスター、ねえ、コレどうしよう?」
佐々木課長の視線が自分に向けられると、リュートさんは少し困ったように小首を傾げた。
「警察に連絡してもいいですけど…」
チラリと絡まれていた彼に目を向けて、様子を窺う。
男の束縛から開放されたその人は、腰が抜けてしまったのか床に座り込んでいた。
離れてもまだ怖いのか、身体が小刻みに震えている。
きっと警察に連絡すれば、男が捕まると共に、彼も連れて行かれて被害に遭った時のことを根掘り葉掘り聞かれるんだろう。
ローズはゲイバーだ。
警察の中にも偏見を持つ人はいるだろう。
彼の事情聴取にそんな人間が当たったら…?
───ダメだ!
折角ローズを選んで来てくれたお客さんに、そんな思いさせられない!!
「リュートさん…っ」
呼びかけると、リュートさんは分かっていると言う風に優しく笑い返してくれる。
だけどすぐに視線を彷徨わせて。
どうすればベストなのか、それを探すリュートさんの眉間にうっすら皺が寄ってる。
佐々木課長は、固め技…って言うのかな?
暴れる男を床に押さえつけて、もう暫くは持ちそうだけど。
俺も…考えなきゃ。
悠さんの居ないこの状況で、一体どうするのが正解なのか。
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