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実は力持ち

「皐月くん、はい、桃のジュースだよ」 戻ってきたリュートさんが、悠さんの左の席にグラスを置いてくれた。 「うわ~い!ぼく桃スキ!ゆうさん、のんでい?のんでい?」 悠さんが笑って頷いてくれるから、膝から下ろしてもらって、隣のイスにエイッとよじ登る。 その左には夏木、そのまた左には赤瀬さん。 この並びは貴重だ。普段夏木が絶対隣に座らないようにしているから。 「悪い、広川、課長達に挨拶しないとだから、席替わってもらってもいいか?」 ジュースを飲もうと手を伸ばすと、突然夏木に話し掛けられた。 折角登ったのに…とジトリと見やると、ごめん!と両手を合わせられる。 「もー。しょーがないなぁ」 仕方なしにイスから飛び下りようとすると、ふわっと身体が浮かび上がった。 すぐに夏木の座ってた席に下ろされて、目の前にジュースも移動してくる。 「これ飲んで待っててな。そんな掛かんないから」 「おおっ、なつきにだっこされた…。なつき、けっこう力あるんだな!」 「いや、お前自分が思ってるよりずっと軽いから!」 「……えぇ?」 俺これでも体重、55kg以上あるんだけどなぁ。 夏木が移動したのを見送って、グラスにささったストローに口を付けた。 夜も更けてきて、店内も賑わってきた。 右端から高山課長、佐々木課長、悠さん、夏木。俺がさっき座ってた席には赤瀬さんが詰めて座って。その隣には赤瀬さんファンのニューハーフのルミさんが陣取ってる。それからまた隣に椎名さん。 椎名さんは、さっき怖い目に遭わされたお兄さんだ。 それにもう1人、端の席に初めて見るお客さん。でも、数回来てるのかな?リュートさんが、また来て頂いてありがとうございますって挨拶してた。 俺は、水槽前に行って魚を見たり、いつものソファー席でジュースを飲んだり、色々。 悠さんが構ってくれないから、ちょっとつまんない。

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