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激烈ラブラブ中
【夏木Side】
広川に席を替わってもらって、香島さん-社長-の隣に座る。
課長達に挨拶を──って、挨拶はいいんだけど、正直意味が分かんねー。
なんでこの人たちがここにいる訳?
…いや、偶然ここに来たってセンも無きにしもあらずだけど、ぶっちゃけ、あの佐々木課長だぞ!わざとだろ。ここに俺がいるって知ってて態と来たんだろう!
ってのが、確信めいた予想。
「ご無沙汰してます」
2人の傍まで行って頭を下げる。
「元気にやっていますか?」
「はい、お陰様で」
社内で会っていた時よりも、柔らかい口調で訊いてくれたのは高山課長。
さっきも、ちっさくなった広川のこと優しい顔で見てたしなぁ。
俺下っ端だったから、遊びに行ったきり帰って来なくなる佐々木課長のことをよくシステム二課に迎えに行ってたんだけど、この人はその度いつも怒ってて。
だから、厳しくてキツイ人ってイメージしか無かったんだけど…。
本当に広川が言ってたように、優しい人だったんだな。
薄々気付いてたけど、高山課長がいつも眉間にシワが寄ってたのって、佐々木課長の所為だったんだろう。
「それで課長、伺いたいことがあるんですが」
元上司・佐々木課長に改めて声を掛けると、何故かニヤリと笑われた。
「ああ、俺と梓な。激烈ラブラブ中だ」
……阿呆だ、この人…
「いや、なんとなく分かってましたから」
席に戻りながらボソッと呟く。
「えっ!?」
呆れて吐いた言葉に、絶望的な声を上げたのは高山課長だ。
「いえ、僕もゲイなので、勘が鋭いというか。本当になんとなくですよ、なんとなく」
「ああ…、そうですよね」
「社内で気付いてたのは、僕と広川ぐらいだと思いますけど」
「広川君もですか!?」
ホッと柔らかな息を吐きだした高山課長が、瞬時にして顔色を青く染め上げた。
広川に気付かれてたことが、そんなにショックなんだろうか。
ここでいきなり鉢合わせて広川にマジビビりされるよりよっぽど良いと思うんだけどな。
「広川、高山課長にも幸せになって欲しいって、密かに応援してたんですよ」
一応フォローも入れておくと、高山課長はいつの間にか水槽前に移動していた広川に目をやって、嬉しそうにフッと微笑んだ。
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