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僕だけを見て
【夏木Side】
うわ…、この人、笑うと美人なんだな。
眉間の皺もすっかり消えてるし。
思わず高山課長にぽーっと見惚れてしまっていたんだろうか、俺は。
「んっ、んーっ」
カウンターの中から咳払いが聞こえてそちらに目をやれば、
俺と目が合うなりリュートさんが、イーッ、と顔を崩してプイッとそっぽを向いた。
「~~~っ……!!」
なにしてんの、あの人!?
スッゲー可愛いんだけどっ!!
身を乗り出して膨らんだほっぺを突付くと、キッ!と睨み付けられる。
「お客様、従業員へのおさわりはお断りしております」
「それはすみませんでした。なら、閉店後ならどうですか?」
「ごめんなさい。僕は軽い男ではないので、お誘いは全てお断りさせて頂いてるんですよ」
ツレナイ台詞を綺麗な笑顔で返してくるマスターは、だけど俺の目を見つめるとフッと目を細めて、
「功太以外の誘いはね」
恋人の顔をして、可愛く甘く微笑んだ。
───っ!!
やっべぇ!俺のリュートさん、マジエロ可愛い!!
「うわ、なんだアイツは。夏木、アイツお前と2人だといつもあんな気持ち悪い顔するのか?ゾッとしたぞ」
社長、うるさい。
しかも腕を擦って暖を取るな!!
「何言ってんですか。また広川に怒られますよ」
広川に庇われずとも、俺のリュートさんはめっっちゃくちゃ!キレかわだけどな。
「夏木、お前にあのマスターって、分不相応じゃねーの?」
ほらほら、課長もこうしてリュートさんを褒めて……
「って!失礼な!」
グラスの底に残ったビールを飲み干すと、リュートさんがすかさずお替わりを持ってきてくれた。
逆三角のカクテルグラスに、深いブルーとピンクの二層になった……って!これナイトアフロディーテじゃん!
なにこの人、俺のこと口説くつもりなの!?
俺モテないって言ってんのに、ほんとリュートさんって、ヤキモチ焼きだよなぁ…。
「………」
いかん、顔がニヤつく……。
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