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社長の奇行

【夏木Side】 暫く4人で談笑しながら酒を飲んで。 「では、私はそろそろ失礼させて頂きます」 一足先に社長が「チェック」とリュートさんを呼んだ。 「そうですね。広川君は子供ですので、今日は早く寝かせてあげてください」 「ええ、心得ております」 なんか高山課長、広川の『第二の母』みたいになってんな…。 社長は会計を済ませ立ち上がると、佐々木課長に向かい深々と頭を下げた。 「先ほどは本当に有難うございました。皐月のパートナーとして、そして店のオーナーとして、心から感謝致します」 俺も倣って、傍らに並ぶと頭を下げる。 「店とリュートさんを守って頂いてありがとうございました!」 「はっ、いいよいいよ。ありがとうはさっきも聞いたし、あのメンツじゃ対抗出来るの俺しかいねーだろ。お前らだって、あの場にいたら同じ様に動いただろうしな。それに俺は梓を守りたかっただけだ。俺が行かなきゃ梓が出張って怪我させられそうだったからな」 社長はフッと笑うと、「お気持ちは充分過ぎるほど」と振り返って広川の姿を探す。 ソファーに行ったり水槽に寄ったりとうろうろしていた広川だったが、今はカウンターに座って隣で溜息を吐くニューハーフのルミさんをじっと見上げている。 ルミさんが190cm近い巨体だから、森でクマと遭遇した仔リスみたいだな。 突然叫び出したルミさんにビクッと肩を揺らすと、お金を置いて帰っていく彼女をぼーっと見送っている。 そんな広川の元へ歩を進めると、社長はその小さな身体を軽々と抱き上げた。 だけどすぐに、擽ったがる広川をイスに戻す。 広川は、両手を差し出し足をばたばた、だっこをせがんでいるようだ。 社長はすぐに抱き上げようとはせず、困惑の表情で額を押さえる。 「皐月、お前小さくなった割に色気が消えきってないぞ…」 「あたりまえでしょ。おれ、25才だもん」 そんな声が小さく、ゆったりと流れるジャズに紛れて聞こえてきた。 ……うん、気持ちは分からないでもないけど……。 流石に、あのサイズの広川に手ぇ出すのは…どうだろうか。 堪え切れっかな、社長。 俺は、広川を抱き上げ課長たちに挨拶を促す社長の姿に、一抹の不安を覚えずにはいられなかった。

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