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おさかなさんとお水
【悠Side】
「ゆーさん!聞いてない!!」
気付けば目の前には、頬をパンパンに膨らませた皐月の顔。
膝に上っていることに気付いて、慌てて危なくないよう腰を抱き寄せた。
「もおっ」
怒りの納まらない皐月は、それでもくっつけたことが嬉しかったようで文句を言いながらも首に抱き着いてくる。
「あのね、ぼくがおさかなさんになったんだから、ゆーさんはお水になってくれなきゃなんだよ?」
「水?」
言い聞かせるように告げられても、それが一体どういう意味なのか……
魚と水……?
「ん~と、うお…ゴコロ?」
「もしかして、魚心あれば水心のことか?」
「あっ!うん、それ~っ!」
皐月は言葉を思い出せたことが嬉しかったんだろう。満面の笑みを浮かべて、俺の頭を「いーこ」と撫でた。
「それもお父さんから?」
「うん!だから、ぼくがゆーさんにゴホーシしたでしょ?」
ご奉仕……。それもあの人が教えた言葉か…。
「ゆーさんも、ぼくにイーコトしてくださいっ」
言葉が通じて満足したのか、もう怒ってはいない声音で元気におねだりしてくる。
『魚心あれば水心』は、良くしてもらった相手には恩を返さなくてはならない、と言う意味の言葉じゃないんだけどな。
子供にとってみたら、そんな風にも受け取れるか。
「ちなみに皐月は、俺にどんなことで返して欲しいの?」
どこまでなら許されるのか、皐月自体がどこまで望んでいるのかと訊ねれば、今まで押せ押せだった当人は急に頬に朱をさし、「え~?ぼくが言うのぉ?」等と口をもごもごさせ始める。
「出来ることなら何でもしてあげるから、ちゃんと口に出して言ってごらん」
ふっくらとした唇を指先でツンとつつくと、両手で顔を覆って隠れてしまった。
唐突にフェラを始めたかと思えばこんなことで恥ずかしがって…。6才児皐月の照れの基準がいまいち良くわからない。
まあ、そんな皐月も途轍もなく可愛いが。
そう言えば、ローズで「ちゅーしたい好き」だと言った時も、こうして恥ずかしがっていたな。
結局、普段の姿だろうが小さな子供だろうが、俺の想いはここに戻ってきてしまう。
皐月は可愛い。
望まれれば、なんでも叶えてやりたい。
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