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子供の寝た後に
【悠Side】
苦肉の策、前を擦ってイカせてやると、欲望を吐き出した皐月はあっけないほど直ぐに眠ってしまった。
愛しさと、罪悪感、物足りなさに、これから3~4日間どうしようかと言う苦悩。
様々なことで頭を悩ませる前に、まず皐月の後始末だ。
唾液や精液で濡れた体を蒸しタオルで拭いて、パンツを穿かせてパジャマを着せる。
布団を被せれば、幸せそうな顔をして眠る子供の顔。
先程までのあの扇情的な眼差しはなんだったと言うのか。
中途半端に勃ち上がり持て余した欲望と汗を流すべくシャワーへ向かう。
それから、スマートフォンが光って受信を知らせているのに気付いたのは、9時過ぎのことだった。
夏木からのLimeで、内容はローズでの支払いの礼と、皐月の服のこと。
どうやら夏木はもうご実家に連絡して、奏太君の服を貸してもらう約束を取り付けてくれたらしい。
更にはチャイルドシートが無いと車に乗れないだろうからと、福太さんと言うお父さんが迎えに来てくださるとまで。
通話を切って、明日の朝の用意を済ませる。
皐月の小さな服は数時間着ただけだが、明日着ていくなら洗っておいてやった方がいいだろう。
下着だけは下のコンビニで調達できたから替えには困らないが、一応洗っておくか。
服はリンナさんに返すが、下着は別だ。迷惑料として貰っても文句は無いだろう。
まったく。あの人はどんな顔して車の絵の付いた幼児用ブリーフなんて買ったんだか。
それから、手土産…か。
迎えに来て頂ける時間は朝早く、土産を買えるような店はまだ開いていない。今の時間では今日の営業は終わっているだろうし。
もし開いていたとして、皐月を置いて1人では買いに行けないしな。
朝、下のコンビニで何か見繕うか。
贈呈用の品も有った筈だし、無いよりはマシだろう。
それにしても、あいつも気が利くようになったな。
奏太君のお下がりか……。
先日会った、夏木には到底似ていない夏木家末弟の姿を思い出す。
狙ったように可愛らしい童顔、女顔。
子供の頃から可愛かったに違いない。
そんな奏太君の着ていた服だ。
可愛いに違いない。
そして、その可愛い服を着た皐月………
俺は自分がこんなだし、今まで子供が欲しいと思った事は無かった。今も本気で欲しいわけではないが、
皐月が分裂し、大人と子供、2人に分かれたなら、25歳の皐月と6才の皐月を育てるのも楽しいだろうな…、等と、頭に浮かんだSFチックな妄想に思わず苦笑した。
しかし、皐月とさつき(とうとう呼び方まで変えた)が俺を取り合って、左右から腕を引っ張ってきたり、膝の取り合いで喧嘩したり、「さつきばっかり構ってズルい!」と子供が寝静まった後にうんと激しいのを強請られたりし……、っ!
「んんぅ~」
「………皐月?」
掛け布団をはいだ皐月は、ただ寝返りを打っただけのようで、すぐにくぅ、と寝息を立てる。
子供が一度寝付くとなかなか起きないというのは本当のようだ。
布団を直してやって、ベッドの端に腰掛ける。
…まったく。純真無垢な、何も知らない子供の顔で幸せそうに眠って…。
あれだけ煽られたら、俺だって我慢するのが大変なんだぞ。
そっと頬を撫でると、嬉しそうにふにゃりと笑う。
早く、元の皐月に戻ってくれよ。
今の皐月も可愛いが、いつもの皐月に会いたいよ。
気付かぬまま、随分と考え込んでしまっていたのだろうか。
洗濯機が電子音を鳴らし、洗い終わりを知らせてきた。
頬から離した手で頭をそっと撫でると、洗濯物を乾燥機に移すために、ランドリールームへと向かった。
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