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大人で子供な皐月くん

【奏太Side】 「世の中は、案外優しくないんだよ」 今度は俺が首を傾げる番。 「俺、悠さんの養子って形で籍に入ってるんだ。ゲイ婚って言って、同性同士のカップルが結婚と同じ意味で籍を同じくする為に使う縁組方法なんだけど。 ゲイ婚しようって言われた時、俺は考えるまでもなく、するって返事した。もし涼太くんが兄弟じゃなくて、ゲイ婚しようって言われたら、奏太くんもその場でいいよって返事しちゃわない?」 「うん。するよ」 そんなの即答だ。 だって、好きだからずっと一緒に暮らしていこうって、口約束だけじゃない、特別な誓いをくれるってことでしょ? それの何がいけないんだろう? 俺の場合は元々兄弟、同じ籍にいるから、そんな誘いは受けないんだろうけど。 「俺ね、そのとき悠さんに言われたんだ。真剣に考えてくれって。 勿論俺はふざけて答えたわけじゃない。適当に答えたわけでもない。悠さんとずっと一緒に居たいと思うから、悠さんもきっと同じ想いでいてくれるものだと思ったから、するよって返事したんだ」 「香島さんは、そうじゃなかったの?」 皐月くんは苦い顔をして笑って、首を横に振った。 「悠さんはね、俺の心配をしていてくれたんだ」 大人になった皐月くんの言葉はすごく解り辛い。 俺がまだ子供だからなのかな? それとも、男同士の恋の初心者だから? 「世間ではね、同性愛者だと気付かれただけで差別される。例えば…ほら、良くテレビにもいるでしょう?女装家やニューハーフの人が隣に座るだけで嫌そうな顔をする人。好きになられたら気持ち悪いって言う人。 そんな嫌な奴、好きになるわけなんて無いのに。ゲイと一緒のお風呂は嫌だとか、男子トイレに入るなとか」 「う…ん…。いるかも」 「ゲイって言ってもさ、男全員が恋愛対象になるわけじゃない。自分だって女性相手なら誰でも良い訳じゃないくせに、好きになられたら気持ち悪いなんて、とんだ思い上がりだ」 「うん」 「そんな人と関り合いになりたくないでしょう? 俺たちはそいつに何も迷惑掛けてないのに、一方的に傷付けられるんだ」 「ひどい……そんな人っ」 皐月くんの話を聞いてたら、涙が滲んできた。 俺は今までそんな風に扱われたこと無かったけど、世の中にはきっとそうやって傷付けられてきた人が沢山いるんだ。 それが、ただ異性を好きになるか同性を好きになるかって、それだけの違いのせいで。 「だからね、そうして傷付けられることから俺を守るために…。 男の苗字が変われば訝しむ人もいる。俺は能天気だから、深く考えずに結婚のつもりで養子に入ったと言ってしまうだろうって。 そうすれば、俺のことを気持ち悪いと、悪意を持って接する人も出て来るだろう。 それでも自分と一緒になってくれるか? ──そう言う意味を込めて、悠さんは真剣に考えてって言ってくれてたんだ」 「………やっぱり香島さんは、皐月くんのことが大好きなんだね!」 香島さんのラブの深さに感動してると、皐月くんが俺を見上げてにこって笑う。 「涼太くんもね」 「涼太が…?」 「守られてるよ。愛されてるでしょ?奏太くんも」 …そう…かも……。 俺も、涼太に守られてるのかも……。 涼太は俺が変な目で見られないよう、意地悪な言葉をぶつけられないようにって、懸命に守ってくれてたのかも。 「…うん、そうだね。俺…」 「あっ、クレープみ~っけ!」 いつの間にか、皐月くんは小さな皐月くんに戻ってた。 「かなたくん!なにたべる?」 ぼくはねぇ…、って皐月くんは目線より高いサンプルメニューを見上げてる。 一瞬前の皐月くんは何処に行っちゃったんだろう。 でもやっぱり、こっちの皐月くんも可愛くて好き! 「皐月くん、高い方がいっぱい見やすいよ!」 「わあっ」 背中から抱っこしてあげると、ありがとうってお礼を言われた。 皐月くんは育ちが良いって言うか、ちゃんと挨拶やお礼ができて、お母さんに良い育てられ方したんだなって言うのが分かる。 一度リュートさんのとこで会った皐月くんのお母さんはやっぱり、上品で優しそうな人だった。おじさんは、面白い人だったけど。 俺の友達の中には、あんまり挨拶やお礼を言えない奴がいたりする。 そいつが来るとお母さん、陰でちょっと嫌そうな顔するもん。 俺も皐月くんを見習って、ちゃんとご挨拶できる子になろう! それから、皐月くんみたいにもーっと涼太のこと、信じられるようになろう!!

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