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おやじさまの運転するおっきな車に乗って、夏木の家に向かう。 途中サービスエリアに寄って、奏太くんとクレープを食べた。 いちごとホイップクリームとチョコソースのかかった豪華なやつ! お父さんじゃぜ~ったい買ってくれないような、高いやつ! 悠さんにも分けてあげたら喜んでくれた。 口の端にクリームが付いたから舐めとってあげたら、なんでかすっごく慌ててた。 いつもだったら、そのままぅちゅ~~って、いっぱい甘いのしてくれるのに。 外だったからかな?…うん、外はだめだよね。がまんがまん。 悠さんとしりとりをして遊んでると、 「皐月くん、皐月くんっ」 後ろから奏太くんに呼ばれた。 「なに~?」 体はチャイルドシートにガッチリ固定されてるから、振り返られずに前を向いたまま返事をすると、 「う~みだあっ!!」 奏太くんのはしゃいだ声が、車外の景色を教えてくれた。 「海っ!?」 「うん。海が見えてきたよ」 慌てて窓から外を見る。 「おわぁっ、海だぁっ!ゆーさんっ、海だよっ!」 「ああ、海だな」 悠さんも楽しそうに笑った。 なんで海って、見えただけで、こんなにテンションあがっちゃうんだろう。 「皐月君、夏になったら泊まりがけでおいで」 親父様が運転しながら誘ってくれる。 「はい!ありがとうございます、おやじさま」 「皆で花火もしようね」 「うん!花火する~っ。リュートさんもいっしょだよね?」 ちょっとおっきい声で訊ねると、リュートさんもおっきい声で返してくれる。 「うん。勿論一緒だよ」 「やったぁ!楽しみだね~」 良かったな、って笑って悠さんが頭を撫でてくれる。 悠さんも楽しそうで嬉しい。 「あっ、でもぼくの水着、おうちにあるよ?」 「ん?大人の水着?」 「あっ、ううん、幼稚園のプールのだった。大人のはねぇ…大学の時に行ったきりだからぁ…新しいの買わなきゃ」 悠さんに、一緒に買いに行って選んで、とお願いすれば、何故だか考え込むように俺の胸元をじっと見つめて…… 「繋ぎのでいいか?」 と訊かれた。 良いわけないじゃん!ルパ○三世じゃないんだから。 悠さんってば、変なの。

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