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ブランコで遊ぼう
お昼ご飯の後、お昼寝をするかと訊かれたけどしないと断って、奏太くんと一緒に庭に出た。
庭には一本の大きな木。太い枝にはロープが2本掛かってて、その先には厚めの板。
つまり、それはブランコになっている。
「すごいね~、おうちにブランコっ」
奏太くんが背中を押して揺らしてくれる。
「俺もちっちゃい頃遊んでたんだよ。今はねー、涼太が座って本読んだりしてる。木漏れ日の下で本読んでる涼太はね~、とっても綺麗でかっこいいんだよ!」
奏太くんは、涼太くんのことがとっても好きなんだね。
声に愛しさが溢れてる。
「でもね、俺もここでマンガ読んでみたけど、良くわかんなかった。揺らした方が楽しいよねぇ?ブランコだもん」
「うんっ、たのしいっ」
「でねー、俺は縁側で寝転んでマンガ読むのが好き~」
「ぼくもマンガすきー」
「皐月くんはどんなの読むの?」
「んとー、バトルものとぉ、スポーツものとぉ」
「恋愛物は読まないの?」
「よまないよぉ。はずかしいもん」
「俺、少女マンガも読むよ。クラスの女子が貸してくれるから」
「オンナノコと、なかいいの?りょーたくんがヤキモチやかない?」
「女の子は平気。男友達のが気になるみたい」
「あ、うちとおんなじーっ」
「おそろい?」
「うん、おそろいっ」
「やったぁ、皐月くんとお揃いだぁ」
「皐月ー」
2人で喜び合ってると、奏太くんお気に入りの縁側から悠さんが顔を覗かせた。
奏太くんがゆっくりブランコを止めてくれるから、下りて悠さんの元へ走る。
「どうしたの?ゆーさんもブランコしたい?」
「香島さん、何キロ?」
「いや、俺はいいよ」
心配そうな奏太くんに首を振ると、悠さんは俺たちに中に戻るようにと言った。
「そろそろ帰る時間だから、最後におやつを食べようって。2人とも手を洗っておいで」
「はーい!」
大きく手を上げて返事すると、庭の出口で泥を払って玄関に回った。
奏太くんと2人、洗面台の前に並んでハンドソープで手を洗う。
「きれい?」
掌を見せて、
「きれい!」
2人で、パンッ、て両手を合わせて。
奏太くんはニコニコしてて、だけどちょっと淋しそうに。
「もう帰っちゃうのか…」
って、呟いた。
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