292 / 298
我が家
おやつの後、奏太くんのおさがりの服に着替えて、写真を何枚か撮られてから夏木の家を出た。
親父様と夏木のお母さん、奏太くんまでは分かるんだけど、なんでか悠さんも一緒になって写してるし、夏木までスマホ構えてリュートさんにプーッてさせてるし、まさかの意地悪壮太まで。
その写真どうするの?って訊いたら「待ち受け」って。
意味が分からなくて首を傾げていたら、悠さんが壮太からスマホをひょいと取り上げてデータを削除してくれた。
帰りはまた親父様が送ってくれて、車から降ろしてくれた悠さんに抱っこされたまま手を振って去っていく車を見送った。
これからローズの開店準備があるって言うから、お手伝いしてから開店前に部屋に戻った。
リュートさん、今日も仕事なのに、朝早くから俺に付き合ってくれたんだ。
元に戻ったら、1日だけでもバーテンダーのお仕事、手伝おうかな…なんて考えてみる。
リュートさん、時々ローズで一緒に働こうって誘ってくれるんだけど、俺今の仕事、辞める気ないんだもん。
だから、土日か祝日に1回だけ。働くんじゃなくて、お手伝いで入るぐらいならいいかな、喜んでくれるかな?って。そんな風に思うの、図々しいかな…。
後で悠さんにも相談してみよう。
手を洗ってうがいして、夕飯はデリバリーで済ませようって悠さんが言ってお風呂を洗いに行ってくれたから、その間にスマホを操作して夏木の実家にお礼の電話を掛けた。
『本当に皐月くんはいいこねぇ。お母さんがしっかり育ててるのね』
母さんまで褒められて、恥ずかしくなっちゃったけど嬉しかった。
話の途中で戻ってきた悠さんと電話を替わって、テレビを観てる間にうつらうつらしてたら、ごはんが届いた。
デリバリーだからピザかな?って思ってたら、お届けしてくれたのは赤瀬さんのお店の見習いシェフの佐倉君。
赤瀬さんのお店で何度か顔を合わせてるのに、「さくらくん、こんばんは」って挨拶したらビックリされた。
「えっ、え!? ……もしかして、オーナーと皐月さんの子供っスか!? 皐月さんに良く似てますけど???」
頭にたくさんのはてなマーク。
「いや、皐月本人だよ。戻ったら赤瀬さんに聞いてごらん」
「えっ、皐月さん!?いやっ、……はぁ、店長に聞いてみます…」
佐倉君の反応が可笑しくて、思わず笑いながら見送った。
そしてご飯を食べて、悠さんにお風呂に入れてもらって、小さな子供用のパジャマに着替えて……
大きな車でお出かけして、夏木家の皆に会えて、気付かないうちにはしゃいでいたのか体は思ったよりも疲れていたようで、俺はベッドに入った記憶も無くいつの間にか意識を手放していたのだった。
ともだちにシェアしよう!