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最悪ノ出会イ 6

「しかしごしゅーさまをそこまでへこませるなんて一体どんな人なのかなあー」 「変なやつだよ…けど、ただ者じゃないことは確かだ。」 皇は掴み所のない男だ。 昨日出会ったばかりとはいえ、大体の人間は幾つか言葉を交わせばそれなりにその人らしさが解ったりするのだが 皇は違う。 ジャージ姿で完璧とはとても言い難いのに、鋭く、なんだか逆らえないオーラがある。 的確につっこむ、かと思えば何の脈絡もない一体何処から出てきたのか解らない言葉を放ったりする。 頭が良いのかアホなのかが全く解らず、掴み所がないという評価を与えるしかないのだ。 「…シロエ、奴の正体を探れ」 月人はシロエを見もせずに静かに命令を下した。 何にせよ、皇はただの人間ではない。 一言で月人の正体を見破ったのだから。 「ぎょいですー」 シロエは久々の使い魔らしい命令に軽く返して、月人に並んで店の表に出た。 どこにでもあるような民家を改造した家を眼を細めて見上げる。 月人は店に入っていき、レジ台の方を見やった。 特にさっきと様子は変わらず、皇は本を広げている。 「…シロエ…?」 月人は小さな小さな声で、店の外から様子を窺っているシロエを呼んだ。 シロエは黄色い瞳を見開いて、奥にいる皇を凝視している。 皇の正体でも探っているのだろうか。 「…ん?」 本を見ていた皇の目が、こちらに向けられ そして店先のシロエを見付けた。 「あっ、こ、こいつ俺が飼ってる猫で!」 月人は聞かれてもいないのに慌てて言い訳をした。 しかしシロエと皇は何も言わずに互いに見つめあっている。 妙な汗が背中を伝うのを感じた。 ヘマするなよシロエ。頼むから頼むからああ! 無言の空間には緊張感が漂う。 「へえー。可愛い猫、だな?」 皇がふっと微笑んだ。 へぁ?、月人が間抜けな声をあげている間に、シロエは目を更に見開き店の中に突っ込んできた。 「お、おい!」 叫ぶ月人の前を素通りし、シロエはスピードを上げ店の中を駆け抜けた。そしてレジ台を遥かに越える高さに飛び上がり、皇の手元へと特攻した。 「ご主人様ーーーーッ!」 素晴らしい発音でシロエが叫んだ。 月人は意識が飛びそうになり、よろけて本棚にぶつかった。

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