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アイツノ正体 1

町を歩けば振り返る女子たち。男でさえも振り返る始末。 そんな完璧高校生九家月人には秘密がある。 一つは喫煙者であること。一つは古本屋兼たばこ屋の仮店主に秘密を知られたこと。 そしてもう一つは知られた秘密が“実は吸血鬼である”ということ。 「嗚呼…偉大なるドラキュラ伯爵様… この罪深きバカな使い魔と彼に裏切られた哀れな俺をお許しください…」 ゲージの中に入れられたシロエの前で天井に向かって呟く月人。 アパートなので天井は低く、一階なので上に住む住民の足音が聞こえた。 「ご…ごしゅーさまあ…」 ゲージの隅でシロエが不安げな声を出した。 月人は静かに縮こまる真っ白な猫を見下ろした。 「気にする事はないよ、シロエ。どんなに優れたものだって間違いくらいは犯すもの。」 穏やかな顔で微笑む月人。 シロエはびくびくと震えながら、小さな声で猫らしく鳴いた。 「そう…俺の間違い…。 お前みたいなバカでボンクラでポンコツを使い魔にした俺の間違いだ!」 月人は微笑みを抹消し、近くにあったハサミをゲージに向かって投げた。 それは凄まじいスピードで、空中を切り裂き、金具と金具の間を抜け、ダーツのようにゲージの向こうの壁に刺さった。 「よい子は真似しないでください!」 シロエは叫びながら、狭いゲージの中で逃げ惑う。 「ごしゅーさまああ!落ち着いてくださいい!死ぬっぽい!」 月人は先程の笑顔からは想像出来ないような、ダークサイドに落ちきった表情でシロエを見下ろした。 「お前と生きて長くなるがこんなに腸煮えたぎったのは初めてだ…」 人殺しのような瞳にシロエは背中の毛を逆立てる。 「仕方ないんですよう!ぼくら逆らえないっぽいんですう!」 必死に叫ぶシロエ。 普段からこんな風にしゃきしゃきと喋ってくれればなあと思う程だった。 「ほう?あいつにか?」 月人はゲージにゆっくりと近付いていく。 がたがた震えながらシロエは更に縮こまる。

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