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アイツノ正体 5
その日の夜。
ケージの中で一日中震えて過ごしていたシロエは
月人が薄ら笑いを浮かべながら家を出て行く姿を、
更に震えながら見送った。
「やばいっぽい...ごしゅーさまがぁぁ」
シロエは猫の丸まった前足で頭を抱えながら、
黄色い瞳に涙を目一杯浮かべていた。
「ごしゅーさまがころされるっぽいいい!」
叫びながらゲージの中をひたすらのた打ち回るシロエ。
普通のゲージであるならばただの猫ではないシロエは簡単に抜け出せるのだが
これには月人の恨みつらみが篭った強力な魔法がかかっている。
やがてシロエの悲痛な叫びは、うるせーぞ!の声と共に落ちてきた床ドンによって途切れたのであった…。
真夜中の静まり返った住宅街。
月明かり…というより街灯の下眼を光らせ、
怪しげな笑みを浮かべる一人の美少年。
「ふっはっはっは…!皇めえ!魔女だかなんだか知らないが
夜になればこっちのもの…夜行性なめんなよ!
ばっきばきに殴り殺してやんよ!」
どこか芝居がかって独り言を呟く彼の姿は、幾らイケメンといえど変質者にしか見えない。
月人の牙は常人よりも、そして昼間よりも発達し刃物のように鋭い。
「よしっ」
眼の前に聳えるのは、魔王の城…ではなくシャッターの下りたたばこ屋兼古本屋。
二階には自宅の一部である部屋があるようだが灯りはなく物音さえなかった。
月人は足音を立てることもなく建物の裏手に回り、
凄まじいジャンプ力で屋根へと飛び上がった。
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