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魔女狩リ、返討チ 3
「月人くん」
名前を呼ばれ、月人は怖々と相手を見上げた。
酸欠で頭がクラクラし始める。
皇は目線を合わせるようにしゃがみ込んでくる。
「君のなけなしのちゃっちい魔法は封じさせてもらいました。はっはーザマアミロ
気付くのに38時間もかかったのは予想外だったけど」
月人が喋れないのをいい事に皇はペラペラと衝撃の事実を告げてきた。
絶望した。月人は普段張っていた結界やらなんやらが解かれていたのについ先ほど気付いたのだ。
それはやはりこの魔女のせいだったらしい。
怒鳴り散らしたかったが酸欠でふらりと目眩が起きる。
「あ、ごめんごめん」
皇は軽く謝りまた人差し指で空中をなぞった。
やっと息が吸えるようになり月人は溺れた人のように夢中で息を吸っては咳き込んだ。
いくら吸血鬼といえど地球上の生物なため酸素を吸わないと死んでしまうのだった。
「..っ、ざけんなッ..なんの、権利があって...っ」
数秒後やっと文句を言うと皇はにこにこと微笑んだ。
「面白いから」
絶句だった。そんな幼稚園児のような答えが通用すると思っているのか。
月人は思わず皇に掴み掛かった。
「戻せ!」
「ヤだ。」
「ヤだじゃねええ!」
皇のジャージを引っ張るが段々力が抜けていき、
布を掴んだままがっくりと項垂れる。
「ふざけんなよ...俺の魔法が全部解けたってことなのかよ...」
「ま、そーなるかなぁ」
淡々と答えられ月人は目の前がクラクラするのを感じる。
それは酸欠ではない。
月人は必死に考えようとした。
正直魔法に頼りきった生活をしていたのだ。
この何百年という時の中それが脅かされたことはなかった。
「俺は...吸血鬼で...それで、魔法で...」
ぼそぼそと呟き、彼の首筋に目がいく。
あの時廊下で感じた甘い香りがした。
「食欲抑制?」
皇は言い当てるとくすくすと愉快そうに笑った。
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