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魔女狩リ、返討チ 4
月人は魔法でそんなに血を飲まなくても生きていけるような身体になっていたのだ。
現代で捕食をするのはなかなか大変であるし、
下手すれば生身の人間相手だと殺しかねないからだ。
何がそんなにおかしいのか、一大事なんだぞと思ったが月人は血に飢えた赤い瞳で皇を呆然と見る他なかった。
しかし魔法のない月人に捕食をする力はない。
「あんた...残酷だな..じわじわと殺す気..?」
こうなってくると笑うことしかできなかった。
月人は笑みを浮かべやがて掴んでいた服からも手が離れる。
最後に食事をしたのはいつだったか。
今は強い魔力を撥ね退ける力もなく、皇と対峙しているだけで体力をごっそりと奪われるようだった。
「魔女は退屈が嫌いなんだよなぁ」
皇が片手を上げると開きっぱなしの店の戸が閉まる。
そして手を触れずしてカーテンもしまり店は薄暗くなった。
「...っていうのはまあ冗談で、
俺はさゆりさんのこの店を守りたいからここに居てえんだよ。」
皇は立ち上がり、脚立に少しだけ登り途中の板に腰掛けた。
「でもそろそろ"期限"が迫ってるから魔界に帰らないといけねーんだ、
が、帰りたくないってわけ。
現段階で即効性があって魔界に帰らずに済む方法は3つ。
1つめは死ぬこと、2つめは逃げること、
3つめは誰かのものになること」
月人は地面に座り込んだまま彼を見上げる。
回らなくなりかけた頭で考え月人は目を細めた。
「....なんで、そこまでして..」
相手の考えていることがわかったがその意味は全くわからなかった。
なぜ人間相手にそこまで出来るのか。
魔界に、"帰らなければならない"だなんて。
魔女という奴は全く不可解だ、理不尽だ。
怒り出したいが何故かその顔を見上げていると悲しい気持ちになる。
「死んだら元も子もないし、逃げるのはここから離れることになっからなぁ
ここに居続ける為には不本意ながら誰かに縛って貰わなきゃならない」
「....っことわる!」
月人は叫んだ。
しかし皇はにこにこと微笑んだままだ。
「察しがいいな、虫ケラにしては。
まあここまでしなくても本当は良かったんだけど
お前は意地っ張りだからと思ってな」
ただでさえボンクラな猫で手を焼いているのにドSな魔女まで。
しかし月人はついその首筋を目で追ってしまい沸騰しそうになる頭をどうにか抑えるのに必死だった。
俺は完璧で無敵で素敵なのだ。
こんな訳のわからん胡散臭い野郎の言いなりになってたまるか。
「俺の主人になってよ」
皇は首を傾けてそう言ってきた。
高い位置から、そんな態度で。
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