20 / 66
魔女狩リ、返討チ 5
「バカ言ってんじゃねーよ....!」
月人は吐き捨てた。
悔しいが相手は自分よりレベルが上の生物だ。
僕になんかできる訳がない。
相手もそれを分かっているはずだ。
皇はため息をついて脚立から降りる。
そして脚立をノックするように叩くとあっという間にそれは王様が座るような椅子へと変化する。
「わかってねーなあ。お前に拒否権ないんだけど」
「..そ、だけど...俺にそんな...力がある訳...」
屈辱的な言葉を言わされ月人は泣きそうになった。
皇は呆れ顔で月人を立ち上がらせ、その豪華な椅子に座らせる。
これでハイ主人になりましたという訳ではあるまい。
今は魔法の力もなく瀕死状態だ。
「失礼しますよっと」
皇の端正な顔が近付き、膝の上に座られ月人は呆然と彼を見上げた。
甘い香りが鼻腔を擽り思わず生唾を飲む。
頭の中が"美味そう"、"腹が減った"という感覚で満たされていく。
そこまで来てやっと月人は気付き、目を見開いた。
慌てて彼の肩を掴み身体を離す。
「ふざけんなやめろ!何してるのかわかってるのかっ!?」
「わかってるよ。でなきゃここまでやんねえよ」
全く意味がわからなかった。なんでそこまでするのかが。
「お前....ばーちゃんに何されたんだ...?」
「言っただろ、恩人だって。助けられたんだよ」
酷く儚げな微笑みを浮かべ、皇はジャージのファスナーを下ろした。
白い首筋と鎖骨が露わになる。
月人は思わず頭を背もたれに押しつけて逃げようとした。
「んっ...やだ...っ!男の血を飲むくらいなら死にます!」
「何言ってんだよ童貞のくせに」
図星をつかれ月人は叫びだしそうになったが彼の端正な顔がすぐそばにあり
その真っ黒な瞳で見つめられ呼吸が止まりそうになった。
ともだちにシェアしよう!